歴史上、テクノロジーは人間の能力を延長する形で発展に役立ってきました。
中でも大きいのが「移動」のテクノロジーです。古くは「車輪」を発明したことに始まり、「馬車」ができ、「自動車」が開発され、「飛行機」で空を飛べるようになる...
乗り物は、まさに人類の発展と切っても切れないものです。
船がなければ、大航海時代が始まることもなかったでしょう。それなくして、アメリカはここまで発展していたでしょうか。
飛行機がなければ観光業界は発展しておらず、自動車がなければ、コンビニやスーパー、通販など、あらゆる流通産業が成り立ちません。
そして現代、人類にとって特に重要なモビリティ(移動手段)である「自動車」が、大きく変わろうとしています。
電気自動車や自動運転技術による「次世代型自動車」が、現在のガソリン自動車を丸ごと入れ替える、と言われているのです。
今回のシリーズでは、自動車産業がどのように発展してきたのか、歴史から現在を整理し、未来についても考えていきます。
本記事はその中で「歴史」の部分、自動車の先祖にあたる「馬車」がどのように発展したかについて整理します。
「今さら馬車?」と思われるかもしれませんが、現在の自動車技術の土台を作ったのが、歴史上もっとも長い間、最速のモビリティだった「馬車」の世界なのです。
紀元前3000年ごろ、メソポタミアのシュメール人が「車輪」を発明したと言われています。馬車が生まれたのもそう変わらない頃でした。
紀元前4000年ごろにはウクライナにいた人たちが馬の家畜化に成功。「車輪」で作った荷車を、馬に引っぱらせて物や人を運ぶというのは、自然なアイデアだったに違いありません。
紀元前2500年にはすでに馬車が存在したと言われ、実に4000年以上も乗り物として使われてきました。
しかし、馬の口にかませる「くつわ(紀元前1200年頃)」、足を乗せる「あぶみ(紀元前4世紀)」などが発明されたことで、戦闘などにおける主流はむしろ「騎乗」となりました。
道路の多くが「けもの道」だった当時、馬車の通行に適した道は多くなかったのです。
陸路の旅でも騎乗が行われることが多く、馬車というより「荷車」とでも言うべきワゴンを引っ張るのがもっぱらでした。
そもそも、人間が快適に乗れる「馬車」を作るためには、次のような技術的ハードルを超える必要がありました。