事業内容
沿革・会社概要
Dropbox(ドロップボックス)は、オンラインストレージサービス『Dropbox』の開発・管理・運用を行っているテクノロジー企業。米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置き、世界各地12ヶ所にオフィスを構えている。
Dropboxは2007年5月、Drew Houston(ドリュー・ヒューストン)氏らによってEvenflowという社名で設立された。当時からオンラインストレージサービスを提供し、リーディングカンパニーとしての地位を築いてきた。2009年10月に、メインサービス名であるDropboxに社名を変更した。2018年3月、NASDAQへ株式上場を果たす。
Dropboxは2019年1月、電子署名および文書ワークフロー プラットフォーム「HelloSign」を買収した。
ミッション
Dropboxは「ファイルの同期を維持すること」から「チームの同期を維持すること」へと注力の軸足を移してきた。Dropboxのミッションは「スマートな働き方をデザインする」ことだ。
過去10年間で、Dropboxは上述のミッションをほぼ達成してきたものの、その過程で多くのユーザーにとって 『Dropbox』というストレージサービスを活用することで生み出される利用者の共有や共同作業といったワークプロセスは、ファイルを保存することよりも価値のあるものであることに気づいた。
これに気づいたことで、Dropboxは「ファイルの同期を維持すること」に注力することから、「チームの同期を維持すること」へと軸足を移してきた。チームの流動性とグローバル化が進むことで、互換性のないツールやデバイス間でコンテンツの断片化が進むなかで、Dropboxが提供する「チームを同期する」プラットフォームの必要性は今後も高まっていくことが予想される。こうした考えのもとで、現在(2020年9月)のDropboxのミッションは「スマートな働き方をデザインする」ことに変更された。
Dropboxはコンテンツを検索したり、アプリケーションを切り替えたり、ワークフローを管理したりするような面倒な作業である「ワーク・アバウト・ワーク(仕事のための仕事)」に費やす膨大な時間とエネルギーの浪費を減らすことに焦点を当てたサービスを展開することに注力するようになった。
事業内容
Dropboxはクラウドベースのストレージサービスを提供している。Dropboxのスマートワークスペースでは、インターネット上でドキュメントや写真、動画などあらゆるファイルを保管および共有できるだけでなく、ワークフロー・承認フローをプラットフォーム上に統合している。
Dropboxは、ユーザーが利用する製品・サービス間の情報の流れを一元化することによってサイロ化を防ぎ、重要な仕事に集中することを実現している。
ビジネスモデル
Dropboxのビジネスモデルは、「Drive new signups(新規ユーザーの獲得)」「Increase conversion of registered users to our paid subscription plans(有料転換)」「Upgrade and expand existing customers(アップセル)」によって構成される。
Drive new signups(新規ユーザーの獲得)
Dropboxは、クチコミ紹介、直接のインプロダクト紹介、コンテンツの共有などにより、効率的かつ比較的低コストでユーザーを獲得している。ウェブサイトやアプリを通じて誰でも無料で『Dropbox』アカウントを作成し、数分で立ち上げることができる。これらのユーザーは、他の非登録ユーザーと共有したり協力したりすることが多く、リファラルによってDropboxのネットワークに新たな登録者を呼び込んでいる。
Increase conversion of registered users to our paid subscription plans(有料転換)
Dropboxの収益の90%以上は、アプリやウェブサイトを通じてサブスクリプションを購入したユーザーによるセルフサービスチャネルから得ている。サブスクリプション収益基盤を拡大するために、登録ユーザーには、ニーズに最も適した機能に基づいた有料プランへの転換を積極的に促している。これは、製品内でのプロンプトや通知、有料プランの期間限定無料トライアル、電子メールキャンペーン、ライフサイクルマーケティングなどを通じて行われる。これらを組み合わせることで、既存のユーザーベースからのサブスクリプション収益の増加を可能にしている。
Upgrade and expand existing customers(アップセル)
『Dropbox』では、個人向けの「Plus」「Professional」から、チーム向けの「Standard」「Advanced」「Enterprise」まで、さまざまな有料プランを提供している。ネットワーク内の利用パターンを分析し、何百ものターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを実施して、有料ユーザーにプランのアップグレードを促している。
『Dropbox』で他のユーザーと協力して仕事をしている個人ユーザーには、より良いチーム エクスペリエンスを得るために「Standard」または「Advanced」プランの購入を促し、既存の『Dropbox Business』チームには追加ライセンスの購入やプレミアム・サブスクリプション:プランへのアップグレードを奨励している。
売上構成
Dropboxは、『Dropbox』プラットフォームへのサブスクリプションの販売から収益を得ており、単一セグメントとして開示している。収益は、通常、『Dropbox』プラットフォームが顧客に提供された日から始まる関連する契約期間に応じて按分して認識される。Dropboxのサブスクリプション契約は通常、月単位または年単位の契約期間となっているが、一部の契約は複数年単位の契約期間となっている。Dropboxの契約は一般的にキャンセルできない。
Dropboxは通常、毎月の契約の場合は前もって請求し、1年以上の契約期間の場合は毎年前もって請求している。請求された金額は、収益が認識されるまで繰延収益として最初に計上される。Dropboxの収益は、主にDropboxの有料プランへのコンバージョンおよびアップセルによって増加する。また、トランザクションベースの製品やパートナーへのユーザーの紹介からの手数料からも収益を得ている。
Dropboxの収益の90%以上をセルフサービス・チャネルから得ている。2019年12月期において、Dropboxの収益の1%以上を占める顧客はいなかった。
KPI・経営指標
Dropboxは、事業の評価、業績の測定、事業に影響を与える傾向の把握、事業計画の策定、戦略的意思決定を行うために、サブスクリプションビジネスにおいて重視されるいくつかの指標を継続的に計測している。
Total annual recurring revenue(ARR:年間経常収益)
Dropboxは、事業成長を示す重要な指標として、主に「Total annual recurring revenue(ARR:年間経常収益)」を重視している。ARRは、Dropboxが継続的な積み上げを期待している売上高を示すものであり、事業の進捗状況を測定することができ、将来の成長を示す指標となる。また、ARR は、Dropboxの事業の健全性を適切に反映していない可能性のあるトレンドの変動の影響を受けにくくなっている。ARRはパフォーマンス指標であり、収益および繰延収益とは独立して見るべきものであり、これらの項目のいずれかの代替物であることを意図したものではなく、これらの項目と組み合わせることを意図したものでもない。
ARR は、サブスクリプションやアドオンを含む、Dropboxのすべての収益源からの貢献で構成される。Dropboxは、期間終了時点でDropboxのプラットフォームにアクセスするための「アクティブな有料ライセンスを持っているユーザー数」に、Dropboxのプラットフォームへの「年率換算のサブスクリプション価格」を乗じたものとして、ARRを計算している。ARRの算出に使用される為替レートは、各会計年度の初めに年ベースで調整される。
Paying users(課金ユーザー数)
Dropboxでは、「Paying users(課金ユーザー数)」を、期間終了時点でDropboxのプラットフォームにアクセスするためのアクティブな有料ライセンスを持っているユーザーの数と定義している。1人が複数のアクティブなライセンスを持っている場合は、複数の課金ユーザーとしてカウントされる。
たとえば、50人の『Dropbox Business』チームは50人の課金ユーザーとしてカウントされ、1人の『Dropbox Plus』ユーザーは1人の有料ユーザーとしてカウントされる。その個人の『Dropbox Plus』ユーザーが50人の『Dropbox Business』チームに所属していた場合、その個人は2人の課金ユーザーとしてカウントされる。
Dropboxでは製品全体で課金ユーザー数が増加しており、セルフサービスチャネルから有料転換した課金ユーザーが大部分を占める。また、Dropboxは2019年1月、電子署名および文書ワークフロー プラットフォーム「HelloSign」社を買収した。『HelloSign』には複数の製品ラインがあり、製品ラインごとに価格設定や収益が異なり、製品ラインによっては購入ライセンス数(Dropboxプランに似ている)に基づいて価格設定されているものもあれば、顧客の取引量に基づいて価格設定されているものもある。
『HelloSign』の課金ユーザー数について、購入ライセンス数に基づいて価格設定されている製品については、期末時点で『HelloSign』プラットフォームにアクセスするためのアクティブな有料ライセンスを持っているユーザー数(『Dropbox』各プランのカウント方法と同様)に加えて、トランザクション量に基づいて価格設定されている製品を利用する顧客数を課金ユーザー数に含めている。
Average revenue per paying user(ARPU:課金ユーザー1人あたり売上)
Dropboxでは、「Average revenue per paying user(ARPU:課金ユーザー1人あたり売上)」を、対象会計年度におけるDropboxの収益を同期間の「Average paying users(平均課金ユーザー数)」で割ったものと定義している。対象会計年度中の数値については、特定の期間の収益をその期間の日数で割った値に365日を乗じて算出される「年換算収益」を使用している。「Average paying users(平均課金ユーザー数)」は、期初の課金ユーザー数と期末の課金ユーザー数を足して2で割って算出している。
『Dropbox』のストレージサービス
『Dropbox』のストレージツールとしての特徴は、そのシンプルな操作性と利便性にある。自端末の専用フォルダにファイルをドラッグ&ドロップするだけで、データの共有・同期が可能となる。登録されたファイルはオンラインでバックアップされ、変更履歴からファイルを元に復元することもできる。
サブスクリプション型サービスで、個人・チームを問わず多様な顧客基盤の多様なニーズに対応するために、様々なプランが用意されている。
2019年12月31日時点で、ユーザー数(無料含む)は6億人で、うち有料ユーザー数は1,430万人だった。また、企業向けプラン『Dropbox Business』を利用するチーム数は45万を超えた。
サブスクリプション・プラン
Dropboxは、多様な顧客基盤の多様なニーズに対応したプラットフォームのサブスクリプションを販売することで、個人、チーム、および組織から収益を得ている。サブスクライバーは、個人向けの「Plus」「Professional」プランで個別のライセンスを購入するか、チーム向けの「Standard」「Advanced」「Enterprise」プランで複数のライセンスを購入することができる。
各チームとは個別に請求されたデプロイメントを表し、単一の管理ダッシュボードで管理される。チームは最低3人のユーザーを持つ必要があるが、数万人以上のユーザーを持つこともできる。顧客は年間プランと月額プランのどちらかを選択できるが、少数の大規模な組織では複数年プランを選択することもある。Dropboxの顧客の大部分は、年間プランを選択している。Dropboxでは通常、顧客にはそれぞれの期間の最初に請求書を発行し、サブスクリプションの契約期間にわたって収益を認識している。海外の顧客は、米ドルまたは選択した数種類の外貨で支払いすることができる。
「Professional」や「Advanced」などのプレミアム・サブスクリプション・プランは、他のサブスクリプション・プランよりも多くの機能を提供し、ユーザーあたりの価格も高額となる。「Standard」および「Advanced」プランは、ビジネス向けの堅牢な機能を提供しており、『Dropbox Business』チームの大多数が「Standard」または「Advanced」プランを購入している。また、「Enterprise」プランでは企業はビジネスニーズに合わせたカスタマイズの機会が増えている。
Dropboxは2019年1月、電子署名および文書ワークフロー プラットフォーム「HelloSign」を買収した。「HelloSign」の買収により、『Dropbox』のコンテンツコラボレーション機能が拡張され、ビジネスに不可欠なワークフローが追加された。『HelloSign』にはいくつかの製品ラインがあり、製品ラインごとに価格設定や収益が異なり、製品ラインによっては購入ライセンス数に応じた価格設定(Dropboxプランに似ている)もあれば、顧客のトランザクション量に応じた価格設定になっているものもある。
購入した製品によって、チームは最低でも一定のライセンス数を持つ必要があるが、数百人のユーザーを持つこともできる。顧客は、年間プランと月額プランのどちらかを選択することができ、少数の大規模な組織では複数年プランを採用している。また、『HelloSign』は通常、それぞれの期間の開始時に顧客に請求書を発行し、サブスクリプション期間に応じて収益を認識する。『HelloSign』は主に米国内で、米ドルでのみ販売している。
多様な顧客基盤
Dropboxの顧客基盤は非常に多様化している。2017年~2019年の3年間は、売上高の1%を超える有料顧客はいなかった。言い換えると『Dropbox』は特定の取引先のみに利用されているわけではない。
顧客は、フリーランサーや小規模企業からフォーチュン100に選出されている企業まで、あらゆる規模の個人、チーム、組織が含まれている。また、業界別、職種別で見ても幅広く利用されている。
競争力の源泉の変化
『Dropbox』はただのオンラインストレージツールから脱却しつつある。
職場では様々な仕事効率化ツールが活用されており、煩雑な操作やコミュニケーションが必要となっている。そのため本来のコア業務がしばしば停滞、ひいては中断してしまうことがあり、ただ忙しいだけで成果が上がることはない。
そこで、Dropboxは2019年にスマートワークスペース『Dropbox Spaces』を追加機能としてローンチした。これは仕事で使うすべてのコンテンツとツールを1か所に集約できるプラットフォームだ。チームであっても、個人であっても、コンテンツとツールに簡単にアクセスすることができるようになる。
スマートワークスペースを利用することで、ユーザーは複数のプラットフォームやアプリ、コンテンツを行き来する必要はなく、すべてを同じ場所で使うことができる。加えて、仕事に関する情報がコミュニケーションツールごとに分散してしまうことはなくなり、1つのワークスペースで全ての情報を簡単に共有することができるようになる。
2019年12月期 Annual Report FORM 10-K(提出日:2020年2月21日)
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