「産学官が目指すべき人材育成の大きな絵姿を示す」として、経済産業省が5月末に公表した「未来人材ビジョン」。「絶望感あふれる」「日本の崩壊が一目瞭然」と、SNSを中心に議論を呼んでいる。
2030年、2050年の産業構造の転換に向けて、人材育成策を議論する「未来人材会議」がまとめた。東大の柳川範之教授が座長を務め、日立製作所の東原敏昭会長兼CEOやディー・エヌ・エーの南場智子会長らが委員として参加する。
「企業が人に投資せず、個人も学ばない」「部長の年収は、タイよりも低い」「国際競争力は、この30年で1位から31位に落ちた」ーー。
109ページの資料には、先進国と呼ばれてきた日本が、国際社会から取り残されている「耳の痛い」現状がずらりと並ぶ。今回の記事では、内容を5つのポイントに分けて解説する。
未来人材会議は6人の委員に加え、富士通社長やトヨタ自動車の総務・人事本部本部長ら9人のゲストスピーカーを迎えて2021年12月〜2022年4月まで5回開催されている。中間のとりまとめとして、未来人材ビジョンが発表された。
「日本企業の競争力を支え、現場でも教え込まれてきた能力・特性とは根本的に異なる要素が求められる」。デジタル化や脱炭素化の潮流で労働需要は「根源的」に変わるとし、全体で雇用や教育のあり方を問う中身になっている。
危機感の大前提に挙げられたのが、生産年齢人口の減少だ。2020年の約7400万人から、2050年には2100万人減の約5300万人と3分の2の規模に縮小する。
一方で外国の人材を誘致する「魅力度」は25位と世界で劣る。外国人労働者数は、需要に対して2030年に63万人、2040年にも42万人不足する見通しだ。
「より少ない人口で社会を維持し、外国人から『選ばれる国』になる意味でも、社会システム全体の見直しが迫られている」と警鐘を鳴らす。