コミュニケーションアプリ「Snapchat」を手がけるSnapが、株式市場で憂き目を見ている。株価はピーク時の約十分の一まで下落し、時価総額は140億ドルを下回った。
今の株価水準は、Snapが上場した2017年同時期と比べても遥かに低い。当時と比べ、売上高は5倍以上に増えた。キャッシュフローがプラスに転じたこともアピールしてきたが、市場はお構いなしである。
純粋なプロダクトとして見たとき、Snapchatが稀有な存在なのは明らかだ。何と言っても、毎日3億6300万人が使っている。上場廃止前のTwitter(mDAU2.38億人)と比べても、1億人以上も大きい。
果たしてSnapは上場企業として「終わった」のか。それとも間違っているのは株式市場の方なのか。無論、どちらであるかを断定することなどできない。
今回の記事では、CEOエヴァン・スピーゲルが考える長期戦略と、具体的な打ち手について掘り下げる。先述した問いに関する答えは、是非とも読者自身で考えてみていただきたい。
まずはSnapの大枠について確認しよう。コアとなるビジネスモデルはある意味シンプルだ。Snapchatを使うユーザーが大量におり、企業が広告を出す。FacebookやTwitterと、基本的には同じモデルである。
押さえておきたいのは、ソーシャルプラットフォームとしての性質である。スピーゲルは過去のカンファレンスで、「SNSの分類」について2020年初め、次のように説明したことがあった(以下、超訳)。
「インターネット上のやり取りは、ピラミッド状に捉えられる。一番下の階層にあるのは感情表現などの(クローズドな)コミュニケーション型だ。幅広い人たちが対象となるもので、Snapchatが扱うのはここだ。友人に話したり、誰もが快適に感じるものだ」
「一つ上の階層にはステータス型(社会的地位)がある。SNSは元来ステータス型だった。自分は何者だ、イケてるなどと誇示し、他者から反応をもらう。コミュニケーション型と比べ、対象ユーザーや利用頻度は少ない。毎日イケてる瞬間を共有できるとは限らないからだ」
「一番上にはTiktokに代表されるタレント型の階層がある。ユーザーは数時間かけて踊り方を覚えたり、創造的なストーリーを伝える。タレントを土台にしたコンテンツは、ステータス型より面白いことが多い。だから、TikTokはInstagramを超える可能性がある」
全体として興味深い話だが、注目したいのは彼ら自身の分類である。Snapchatは最下層の「コミュニケーション型」プラットフォームであり、親しい人とのクローズドなやり取りが核にある。ここで若手層のニーズを掴んでいることが、Snapが有する根源的な優位性と言える。