2018年6月〜8月の間にアメリカでは合計81社が新規上場しました。
今回はその中から気になった10社を時価総額の大きい順に紹介していきたいと思います。
1社目はアメリカ国内に215店舗を構える会員制倉庫型スーパー「BJ's Wholesale Club」です。
(公式HP)
BJ's Wholesale Clubは1984年にマサチューセッツ州でディスカウントショップ「Zayre」のチェーン店としてスタート。
「Zayre」がライバル企業に買収されたことを受けて1997年にスピンオフしました。
以前に一度ニューヨーク証券取引所へ上場していましたが、2011年にPEファンドの買収によって株式非公開に。
今回は二度目の上場となります。
店名にある「BJ」の由来は、スピンオフ時に社長を務めていたMervyn Weich氏の娘さんのイニシャルだそうです。
BJ's Wholesale Clubは競合他社と比べて品物のサイズが小さく、生鮮食品を豊富に取り揃えていることが特徴です。
業績推移を確認してみましょう。
18/2期の売上高は127.5億ドルで、近年の業績は横ばいで推移しています。
営業利益率は1.7%前後です。
「Tenable」はサイバーセキュリティ企業で、脆弱性検知SaaSを提供しています。
(公式HP)
Tenableは2002年、Renaud Deraison氏によって設立。
Deraison氏が1998年に開発したオープンソースの脆弱性検知ソフト「Nessus」を商用ライセンスとして提供しています。
「脆弱性」とは簡単にいうと「コンピュータウイルスが攻撃しやすくなっている場所」のことで、Tenableが提供する脆弱性検知ソフトはハッカーからの攻撃を未然に防ぐための「穴探し」をするためのサービスです。
売上の成長が加速しており、17/12期の通期売上高は前年から50%増の1.9億ドルです。
営業利益は出ておらず、0.4億ドルの赤字を計上しています。
顧客数は2万4,000社以上で、JPモルガンといった大手金融機関やAmazon、NASAなども名を連ねています。
続いて燃料電池システムを開発する「Bloom Energy」です。
(公式HP)
Bloom Energyは2001年にK.R. Sridhar博士が創業した会社で、NASA向けの燃料電池開発プロジェクトとして立ち上がったのが始まりです。
NASAプロジェクトの終了後、チームはそのまま会社としてクリーンエネルギーの研究開発を続けることを決意。
2002年にはベンチャーキャピタルのKPCBよりシード投資を受けました。
2011年にソフトバンクグループと合弁で日本法人を設立しています。
Bloom Energyはクリーンエネルギーシステムである固体酸化物形燃料電池(solid oxide fuel cell)を開発。
商用製品の1番目の顧客はGoogleで、2008年にGoogle本社へ100kWの燃料電池を納品しました。
ウォルマートやホーム・デポなどもクライアントで、各店舗で電気自動車の充電設備として活用されることも増えています。
17/12期の売上は3.8億ドルと前年から大きく売上を伸ばしています。
これまでは赤字が続いていましたが、2018年上半期はわずかに黒字となっています。
「Uxin」は中古車ECを展開する中国企業です。
(公式HP)
一般顧客向けの中古車EC「Uxin Used Car」とカーディーラー向けの「Uxin Auction」を提供しており、いずれも中国国内でのシェアが40%を超える中国最大の中古車ECサービスとなっています。
昨年度の流通総額(GMV)は43.4億元(6.3億ドル)、取り扱った中古車の台数は63.4万台にのぼっています。
業績推移を見てみましょう。
17/12期の売上高は19.5億元(2.9億ドル)で、前年から倍以上の増収を達成しています。
一方、営業損失は拡大傾向にあります。
高音質なワイヤレスサウンドシステムを提供する「Sonos」です。
(公式HP)
Sonosは2002年、John MacFarlane氏、Craig Shelburne氏、Tom Cullen氏Trung Mai氏の4人によってカルフォルニア州のサンタバーバラで設立されました。
MacFarlane氏が提案した最初の事業アイデアは「航空機内でインターネットを使えるようにする」というものでしたが、ほかの3人には響かず。
その後、4人の共通した趣味である音楽からインスピレーションが生まれ、複雑な配線作業をなくすために「ワイヤレススピーカー」の開発に着手しました。
2004年に最初の製品「ZP100」を発表。
複数のスピーカーをワイヤレスで連動できるマルチオーディオは大ヒットとなりました。
売上は堅調に増加しており、昨年度の売上高は9.9億ドルとなっています。
営業損失は縮小傾向です。
(参考)
スマートスピーカーのアメリカ国内シェアはAppleの「Home Pod」に次いで国内第4位。
近年は高音質なスマートスピーカーとしても人気が高まっています。
「Arlo Technologies」はスマート監視カメラシステムを提供しています。
(公式HP)
もともと「Arlo」は、ルーター機器などを販売する「NETGEAR」の製品ラインナップの1つでしたが、2018年2月にスピンオフしました。
現在もNETGEARが株式の80%を保有しています。
「Arlo」はWi−Fiで接続可能なワイヤレス監視カメラで、録画した映像をモバイルアプリで管理できます。
また、機械学習による人物検知が特徴となっています。
通期の売上高は3.7億ドルで、前年から売上が倍増しています。
「Puxin」は中国で個人チューターサービスを展開しています。
(公式HP)
Puxinは2014年9月に創業。
3歳〜6歳の未就学児童や海外留学志望者など、幅広い年代や教育ニーズに対応しています。
スタッフ数は約1万2,000人、中国35都市に397の学習センターを設置しており、中国で3番手のチューターサービス事業者となっています。
2018年6月末時点で約128万人の生徒を指導しています。
通期の売上は12.8億元(1.9億ドル)で、16/12期から3倍に増加。
営業損失は拡大傾向です。
決済ソリューションを提供する「i3 Verticals」です。
(公式HP)
創業者のGreg Daily氏はこれまで複数のサービスを立ち上げてきたシリアル・アントレプレナー。
1984年にクレジットカード処理会社「PMT Services」、2001年に決済処理システムを提供する「iPayment」を創業しており、決済システム関連のスペシャリストといえる人物です。
i3 Verticalsはスモールビジネス向けに決済システムを提供する目的で2012年に設立しました。
個人経営の小売店や病院、NPO法人など、小規模事業者が簡単に決済システムを構築するためのプラットフォームを提供しています。
17/9期の売上は2.6億ドルで、前年からの成長率は約30%です。
「EverQuote」はオンライン保険のマーケットプレイスを提供しています。
(公式HP)
創業者のSeth Birnbaum氏とTomas Revesz氏はマサチューセッツ工科大学で出会い、2011年にEverQuoteを創業しました。
EverQuoteはユーザーがオンライン保険を比較できるサービスで、主に自動車保険を取り扱っています。
自分の安全運転度合いを計測できるアプリも提供しており、ユーザー同士でスコアを競い合うこともできます。
17/12期の売上は1.3億ドル、営業損失は400万ドルほどです。
最後に取り上げるのは2014年創業の「HyreCar」です。
(公式HP)
最近はUberやLyftなどの配車サービスが急速に普及していますが、ドライバーにとっては州ごとに利用可能な車両の条件が異なることが悩みの種となっていました。(Uber:ワシントンDCの車両条件)
HyreCarは、配車サービスで稼ぎたいドライバーと利用していない自動車を収益化したいオーナーをマッチングするプラットフォームです。
通期の売上高は322.4万ドルと規模は小さいですが、16/12期から1年で6倍以上の急速な成長を遂げています。
2018年上半期はすでに前年度の売上高を上回っています。