今回、長編に渡って特集するのが世界最大の動画ストリーミング『Netflix』の歴史です。Netflixはアメリカの有力テック企業『FAANG(Facebook、Amazon、Apple、Netflix、Google)』の一角を担っており、メディアでもその動向が取り上げられるようになっています。
株価の推移を見てみると2014年あたりから株価は急上昇。現在の時価総額は1352.6億ドルにまで拡大しています。
現在の若い人たちはスマホで見れるいわゆる"Netflix"しか知りませんが、創業当初のネットフリックスは、オンラインDVDレンタル事業という今とは全く違う事業を行なっていました。
今回の連載では、ネットフリックスがどのような過程でオンラインDVDレンタル事業を始め、どのように現在の"Netflix"に成長してきたのか、その歴史を紐解いていきたいと思います。
学問一家に生まれた天才創業者「リード・ヘイスティングス」
ネットフリックスの創業者は『リード・ヘイスティングス』と呼ばれる人物です。
沿革
1997年8月 | マーク・ランドルフとリード・ヘイスティングスによりNetflix設立。よく知られる「アポロ13号のレンタルDVDの延滞料が高すぎて、延滞料のないDVDレンタルサービスを作ろうと思った」という逸話は嘘らしい |
1998年4月 | オンラインDVDレンタルサービス「Netflix.com」がローンチ。ヘイスティングスは立ち会ったものの、オフィスの片隅にいるだけだった。ローンチから90分後、サーバーは容量いっぱいになってクラッシュした |
1998年9月 | ヘイスティングスがNetflixのCEOに就任。大学院で教育を学んでいたヘイスティングスだったが、学位をテコに高報酬を得ることに関心があるスタンフォードのクラスメートに幻滅。Netflixオフィスに顔を出す回数が増えた |
1999年9月 | 一度に4本までレンタルできる月額15.95ドルのサブスクリプション型プラン「マーキープラン」をリリース。 |
2000年2月 | Netflixがアラカルトプランを廃止、マーキープランの名称を「無制限映画レンタル」サービスへと変更して月額料金を19.99ドルに引き上げた |
2002年5月 | Netflix、ナスダック市場にIPO(新規上場)。市場がネットバブル崩壊や9.11の後遺症に苦しむ中、投資家に「郵便DVDレンタル」一点に絞り込んでアピールした |
2003年3月 | Netflixを利用する有料会員数(Subscribers)が100万人を突破 |
2004年7月 | ブロックバスター・オンラインがWebサイトのβ版をリリース。そこに現れたのは、Netflixと瓜二つのサービスだった。 |
2005年8月 | ブロックバスターが格安料金戦略を撤回、料金体系をNetflixと同じにすると発表。月額プランを14.99ドルから17.99ドルへ引き上げた |
2006年11月 | ブロックバスターが店舗とオンラインのハイブリッドプラン「トータルアクセス」を正式に開始。オンラインで借りたDVDを返却するとき、店舗でもう一枚借りられるという対Netflix作戦であった |
2007年1月 | Netflixが新ストリーミングサービス「インスタントビューイング」のデモを披露。品揃えはたったの千タイトルほどだった |
2007年3月 | 物言う株主カール・アイカーンがボーナスの減額を提示し、不満に思ったブロックバスターCEOのジョン・アンティオコが退任。 |
2008年5月 | 社内ベンチャーとして始まったセットトップボックス「Roku」をリリース |
2009年3月 | Netflixの有料会員数が1,000万人を突破 |
2011年9月 | ラテンアメリカおよびカリブ地域でも動画ストリーミングサービスを開始し、初めて北米以外の地域に進出 |
2011年9月 | リード・ヘイスティングスがビーチシャツ姿でYouTube上で謝罪。DVD配達部門を「クイックスター」としてスピンオフする方針を掲げ、実質的な値上げとなって猛反発を食らっていた。騒動前に305ドルだった株価は65ドルまで暴落、スピンオフ計画は白紙となり、クイックスターは解散。100人前後が失職した。 |
2013年2月 | Netflixがオリジナル作品「ハウス・オブ・カード」全13話を一挙にリリース |
2014年3月 | Netflixの有料会員数(DVD含む)が合計5,000万人を突破 |
2016年1月 | Netflixの配信エリアが190か国を突破。中国や北朝鮮、シリアなどを除いてほとんど全世界で視聴できるように。 |
2017年3月 | Netflixの有料会員数(DVD含む)が合計1億人を突破 |
2019年2月 | 『ROMA(ローマ)』がアカデミー賞を席巻、動画ストリーミング企業が手がけた作品として初の受賞となった |