小田急電鉄の事業について調べます。
小田急電鉄は、大正12年に「小田原急行鉄道」として設立され、昭和2年に小田原線を開通しました。
昭和17年には東京横浜電鉄や京浜電気鉄道と合併し、東京急行電鉄となります。
その後、昭和23年に東京急行電鉄の再編成により、再び「小田急電鉄」として分離。
まずは全体の業績を見てみます。
営業収益は安定して5000億円前後、経常利益は250億円から360億円程度で推移しています。安定しており、コメントのしようがないですね。
次に、セグメント別の業績を調べます。
小田急電鉄の事業セグメントは「運輸業」「流通業」「不動産業」「その他」の4つがあり、それぞれの概要は次の通りです。
運輸業
主に次の7つに分類されます。
・鉄道事業(小田急、箱根登山鉄道、江ノ島電鉄)
・自動車運送事業(箱根登山バス、江ノ電バス、小田急箱根高速バスなど)
・タクシー(小田急交通)
・航路(箱根観光船)
・索道(箱根ロープウェイ)
・鋼索(大山観光電鉄)などが含まれます。
流通業
百貨店業(小田急百貨店)、ストア業(小田急商事など)が含まれます。
不動産業
不動産の分譲や賃貸を小田急不相談、箱根施設開発などで展開。
その他
ホテル、レストラン、旅行、ゴルフ場などを行なっているようです。
セグメント業績を見ると、運輸業が1728億円、流通業が2192億円、不動産業が699億円、その他が995億円を売り上げています。
百貨店などを含む流通業の方が本業の運輸業(鉄道など)よりも大きいんですね。
流通業の収益内訳です。
2192億円のうち、小田急百貨店の新宿店が914億円、町田店が362億円、藤沢店で131億円、ストア業が782億円を売り上げています。
さらに、運輸業の収益内訳です。
運輸業の収益1728億円のうち、1317億円が鉄道事業、370億円が自動車運送事業でした。
流通業の方が運輸業よりも収益が大きい小田急電鉄ですが、営業利益ベースだと本業の流通業がメインのようです。
2016年は運輸業で286億円、流通業で31億円、不動産業で123億円を稼いでいます。
最後に、小田急電鉄のキャッシュフロー分析による企業価値の試算を行います。
まずは過去のキャッシュフロー推移を調べます。
FCF(フリーキャッシュフロー)は安定して150億円以上を生み出していますが、2017年3月期には50億円にまで減少しています。
この原因は、有形固定資産の取得による支出が747億円と、例年に比べて100億円以上高かったためです。
まずはかなり保守的に見積もって、小田急電鉄が永遠に100億円のFCFを生み出し続けるものとして試算してみます。
割引率は5%とします。
年 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|
予測FCF | 100億 | 100億 | 100億 | 100億 | 100億 |
現在価値 | 95億 | 90億2500万 | 85億7375万 | 81億4506万2500 | 77億3780万9375 |
割引率 | 0.05 | ||||
永久成長率 | 0.0 | ||||
継続価値 | 2000億 | ||||
企業価値 | 2429億8162万1875 |
現在の時価総額が8228億円なので、大幅にディスカウントしてしまいました。
割引率を米国長期国債と同じ2.2%とするとどうなるでしょう。
年 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|
予測FCF | 100億 | 100億 | 100億 | 100億 | 100億 |
現在価値 | 97億8000万 | 95億6484万 | 93億5441万3520 | 91億4861万6423 | 89億4734万6861 |
割引率 | 0.022 | ||||
永久成長率 | 0.0 | ||||
継続価値 | 4545億4545万4545 | ||||
企業価値 | 5013億4067万1349 |
割引率をこれだけ控え目にしても、企業価値は5013億円という試算になりました。
ただ、実際に生み出されるキャッシュフローの平均は過去の実績を見ると180億円程度になる可能性が高いので、そのケースでも試算してみます。
年 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|
予測FCF | 180億 | 180億 | 180億 | 180億 | 180億 |
現在価値 | 176億400万 | 172億1671万2000 | 168億3794万4336 | 164億6750万9561 | 161億522万4350 |
割引率 | 0.022 | ||||
永久成長率 | 0.0 | ||||
継続価値 | 8181億8181万8181 | ||||
企業価値 | 9024億1320万8428 |
こうすると、企業価値は9024億円と現在の時価総額(8228億円)にかなり近い値となりました。
このことから、小田急電鉄は現時点では特に過大評価も過小評価もされていない、と考えます。