Etsy(エッツィ)は世界最大のオンライン・ハンドメイド・マーケットを提供する米国のインターネット企業。
苦戦しているという話を聞くが本当だろうか。
業績推移を見る限りでは、規模は数億円程度ながら順調に売上を伸ばし、人件費の高い米国系テクノロジー企業でありながら営業黒字も達成している。
もう2年も前だが、Wiredにこんな記事が掲載された。
この記事では、Etsyが大きくなるにつれて量産品をハンドメイドに見せかけて転売したり、「本職をやめよう」というメッセージを打ち出しながら、ほとんどの売り手にとってフルタイムにできるほど稼げる市場になっていないことなどが私的されている。
要するに、小さいうちはよかったけど規模が大きくなる過程で、他のECマーケットプレイスと変わらなくなってしまった、という主張のようだ。
もっと最近の記事に、ニューズピックス(中身はブルームバーグの和訳)にも似た内容の記事を見つけた。
記事によれば、Etsyは「上品ぶったeBay」とも言われていて、大きくなる過程で「資本主義」と「手作り一点物」というある種矛盾した二つの価値観に苦しんだ。
例えば、人気商品を作ったからといってそのために従業員を雇って事業を拡大してはいけなかった。これはEtsy自身にとっても明らかな収益機会の損失である。そういうある種の矛盾に苦しんだ、という内容。
現在はその辺の「純粋主義」的なルールは緩和されたようだが、収益を重視する株主などと理想主義を追求するコミュニティとの間でのせめぎ合いはまだ続いている、という感じらしい。
問題は、当のEtsyがどうするつもりなのかである。これはもう決算資料を見るしかない。2016年のアニュアルレポートを見てみる。
まず現在の業績をみると、取扱高は28億ドルで前年+30%、売上高は3.65億ドルとなっている。
170万人のアクティブな売り手がおり、2860万人のアクティブな買い手がいる。
訪問の64%、取扱高の48%がモバイルを通じて行われている。
下半分はよくわからないが、「Etsy Payments」「Shipping labels」などの独自サービスも順調に使われてきてますよ、と言いたいようだ。
最後に、「To the Etsy Community」と題したページがあったのでこれを読んでみる。
中身をみると、コミュニティへというよりは普通に投資家への手紙である。
目についたのは、「Etsyは人々に、人間関係と創造性によって生計を立てる手段を提供している」という箇所。Etsyは単なるクリエイティブ・アウトレットではなく、新たな収入の場であり、売り手のうち3分の1はフルタイムで生計を立てられているという。170万人の売り手のうち、60万人程度はEtsyだけで生活しているという計算になる。これは普通にすごい。
このままEtsyがマーケットプレイスとしての規模を拡大し、より幅広い買い手を集めていくことができれば、より多くの作り手が、より多くのお金を稼げるようになるだろうし、そこで商品が売れるかどうかは売り手の力次第になっていくのだと思う。あらゆるマーケットでそうであるように。
Etsyは「ハンドメイド品」というカラーこそあれ、買い手が欲しいのは良い商品かどうかだけだと思う。そういう意味では良い作り手を応援することも大事なのかもしれない。