Carvanaという会社をご存じだろうか。「中古車の自動販売機」に代表される斬新な販売方法を提案し、米国の中古車産業に大きな衝撃をもたらしたベンチャー企業だ。
そのCarvanaが、株式市場で果てしない憂き目を見ている。株価はピーク時から約99%もの下落。一時630億ドルにのぼった時価総額はどこへやら、今は7億ドル程度にまで沈んでいる。
企業としての存続も危ぶまれ始めた。追加資金がなければ2023年までに現金が枯渇すると分析する、バンク・オブ・アメリカのアナリストもいる。
Carvanaが革新的なビジネスモデルで需要をつかみ、急拡大を実現したことは確かだ。米国の中古車産業が巨大で、非合理を抱えているのも事実。だからこそ、苦境に陥ってなおCarvanaの行く末には注目が集まる。
今回の記事では、Carvanaのビジネスモデルについて改めて紹介した上で、同社の近況を徹底解説する。果たして彼らは破綻してしまうのか。再起の可能性についても、考えを巡らせたい。
米国の自動車産業は1兆ドル(2020年)の大きさがあり、小売全体の21%を占める。そして中古車市場は8,400億ドル(2019年)。新車が多勢を占める日本とは違い、中古車販売の方が圧倒的に大きい。
そして、最も大きなディーラーでも市場の2.2%を占めるにすぎない。上位100社をかき集めても10.2%と、いわゆる断片化された(Fragmented)市場である。
Carvana
消費者の81%は「車を買うプロセスが楽しくない」と言う。ディーラーを「とても信頼できる」人はわずか9%。売り手との価格交渉はつきもので、情報の非対称性が大きい。消費者が毛嫌いするのも無理はない。
買い手の86%は事前にインターネットで情報を集めている。実店舗には「試し乗り」できるメリットはあるが、二台以上試す消費者は48%に過ぎない。
それなら、オンラインで売って返品できるようにすればいい。価格は市場の水準に準拠し、透明性を高めよう。車両の整備も自社で行い、効率性を高めよう。これがCarvanaのアプローチである。
Carvanaなら、車を選んで購入するまで10分程度で完了。対応地域なら、翌日に車を受け取れる。車両の選択肢は七万台以上。ディーラーへの手数料も不要のため、価格優位性もある。
まさに「中古車版Amazon」というべきモデルで、消費者からも市場からも注目を集めた。先述した「自動販売機」は33拠点で展開。ただ便利なだけでなく、ソーシャルでの口コミに一役買ったのは言うまでもない。
一見して画期的に見えるCarvanaのビジネスが、なぜ苦境に陥ってしまったのか。一つの要因は、仕入れ販売なら避けては通れない「在庫」の問題にある。