デジタルを基盤とするサービスが普及・発展する一方で、企業や個人を標的とするネット犯罪が後を絶たない。直近では国内最大企業のトヨタ自動車がサイバー攻撃の影響で、国内全工場を稼働停止する騒動もあった。
犯罪の攻め手や技術が高度化するなか、対策に当たれるセキュリティ人材の確保は欠かせない。しかし、日本は企業の9割が「不足を感じている」とする民間の調査結果もある。1割強の欧米と比べて突出して高い水準だ。
もはや「犯罪とデジタル空間を切り離すことは困難になった」。サイバーセキュリティ人材の養成が急務として、警視庁は大手企業や大学など5法人とこの分野で連携する協定を26日に結んだ。
産官学で情報技術、犯罪捜査、学術研究のノウハウを共有する「多面的な協力体制」を構築し、実践力のある専門人材が育つ枠組みを目指す。
警視庁とヤフー親会社のZホールディングス(HD)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、大日本印刷(DNP)、中央大学、明治大学が協力する。
MUFGは金融、ZHDは傘下のLINEがデジタル技術で生活の重要インフラを担っている。26日の共同会見で、MUFGの大日向隆之CISO(最高情報セキュリティ責任者)は「犯罪の手口は日々変わり、適用は容易ではない。しかし関連人材の裾野は欧米に見劣りしている」と話した。
左から河合久・中央大学長、長畑誠・明治大教授、中谷昇・ZHD常務執行役員、金沢貴人・DNP常務執行役員、大日向隆之・MUFGCISO、山本仁・警視庁副総監(26日、東京都新宿区)
また、ZHDの中谷昇常務執行役員は「セキュリティでも人への投資は重要だが、個社では限界がある。異業種の知見に触れ、企業としての技量を高めたい」と述べた。