「日の丸液晶」と言われたジャパンディスプレイが、経営危機にあえいでいる。
同社はもともと、2002年に設立された日立の子会社「日立ディスプレイズ」が前身だ。2008年、キヤノンと松下電器(現・パナソニック)との間で合弁化されたが、2011年に会社再編計画が公となる。
官民ファンド「産業革新機構」の主導で、日立とソニー、東芝のディスプレイ部門を統合することになった。三社とも「中小型」のディスプレイに特化しており、統合すれば研究開発や生産体制を効率化できる。
パナソニック液晶の「茂原工場」も買い取り、工場の統廃合が進められた。2011年は、まさにスマートフォンやタブレットという新デバイスが市場を席巻していたタイミング。
ジャパンディスプレイには「日の丸液晶」として、世界を相手に戦っていくことが期待された。
2013年4月に三社が合併され、現在の「ジャパンディスプレイ」ができあがった。翌年3月には東証一部に上場。
いわば、「日本政府の旗振り」によってスタートしたジャパンディスプレイだったが、経営は立ち行かない。
2015年度には売上9,891億円と、1兆円に迫るまで拡大したが、314億円の最終赤字を計上。その後は売上も縮小してしまい、2017年度には2,472億円の大赤字となった。
2018年度の業績も売上6,366億円、最終赤字1,091億円という結果に。これでは、投資家のお金を溶かしているだけである。
ジャパンディスプレイの事業は、構造的には非常にシンプル。研究開発と設備投資に巨額の投資を行い、中小型ディスプレイを製造して販売する。販売先は、スマートフォン向けが中心だ。
仕入先から部材を仕入れてディスプレイを量産し、下流工程の製造会社や、販売会社に売る。それだけである。
損益計算書を見てみると、売上原価率が非常に高い。2017年度には売上をも超えてしまった。ディスプレイを販売しても、粗利すら稼げていないのだ。
どうしてジャパンディスプレイは、このような状況に陥ってしまったのだろうか。そもそも、ここから「復活」することなど可能なのだろうか?
今回は、外部環境と経営内部の両方について、一つずつ問題を整理してみたい。