先日発表された「GMOインターネット」の2018年2Q決算についてまとめます。
最初に全体の業績推移を把握していきます。
四半期の売上高は過去最高の476億円です。
増収率は24.1%となっており、売上高の成長スピードが加速しています。
営業利益は65億円で、前年から64.5%増加して過去最高益となりました。
ここにきてGMOインターネットの成長が加速している要因は何でしょうか?
彼らは数多くの事業を展開しているので、一つずつチェックしていきたいと思います。
GMOインターネットは自社の事業領域を「インフラ」「広告・メディア」「 金融」「仮想通貨」という4つに分類しています。
そのほかに未上場企業への投資を行なう「インキュベーション」事業も行なっています。
収益の大きい主要3セグメント「インフラ」「広告メディア」「金融」から業績推移を確認していきましょう。
インフラ事業が堅調に売上高を伸ばしており、248億円となっています。
広告メディア事業は前年と変わらず110億円、金融事業は10%増の76億円です。
「仮想通貨」、「インキュベーション」の売上高はどのように推移しているでしょうか。
仮想通貨事業は前四半期に6億円と減少しましたが、今四半期は27億円と大きく増加しています。
また、インキュベーション事業についても20億円の収益をあげています。
営業利益についても構成をチェックしてみましょう。
インフラ事業の占める割合が最も大きくなり、27億円と前年から53%増加しました。
次に営業利益が大きい金融事業は、前年同期と同水準の26億円となっています。
また、インキュベーション事業が15億円と急増し、営業利益を押し上げる要因となりました。
これは、投資先である「メルカリ」や「ラクスル」のIPOによって15億円のキャピタルゲインが発生したためです。
インキュベーションは別にして、GMOインターネットの成長要因となっている「インフラ」と「仮想通貨」の事業KPIを詳しくチェックしていきたいと思います。
インフラ
インフラ事業はさらに6つの詳細なセグメントに分かれています。
売上高の構成比を確認してみましょう。
「GMOペイメントゲートウェイ」を中核とする決済事業が68億円で27%を占めています。
アクセス事業(ネット接続事業)はインフラ事業の中で最も成長率が高く、前年から45%増の64億円となりました。
これまで最も構成比の大きかったクラウド・ホスティング事業は横ばいが続いているものの、35億円前後の安定した収益を稼いでいます。
そのほか、EC支援事業25億円、ドメイン事業21億円、セキュリティ事業14億円となっています。
成長率が最も高いネット接続事業について、KPIである契約回線数を確認してみます。
2017年度までは契約会員数を開示していましたが、2018年1Qより契約回線数を発表しています。
今四半期の契約回線数は前年から57%増加して120万件となっています。
メインサービスの『GMOとくとくBB』は個人向けプロバイダーサービスで、WiMAX2+やドコモ光といったインターネット接続サービスを格安で提供しています。
仮想通貨
仮想通貨事業は「GMOコイン 」が提供する交換所事業と、自社で仮想通貨の採掘を行なうマイニング事業の2つに分類されます。
売上高の構成を確認してみます。
相場の変動によって前四半期に落ち込んだ交換所事業が、今四半期は14億円まで増加しています。
マイニングも12億円と堅調に増加しています。
「GMOコイン」の仮想通貨交換所は「口座数」と「売買代金」をKPIとしています。
口座数は順調に増加し、2Q終了時点で17万口座となっています。
セグメント利益についても確認してみます。
売上高が上昇したマイニング事業ですが、今四半期は赤字となっています。
マイニング事業の売上高は「1日あたりの採掘量」×「価格」で構成されます。
また、マイニングマシンの採掘速度(処理能力)は「ハッシュレート」によって図られ、市場全体の「総ハッシュレート」が大きくなるほど、収益性は上がりにくくなります。
一方、マイニング事業の売上原価はマイニングマシンの「電気代」「機器」「設備」を合算した値となります。
市場全体の総ハッシュレートが上昇すると、相対的にマイニングできるBTCの量が少なくなるため、マイニングマシンにかかる費用も増大します。
BTCの価格(オレンジ)は横ばいとなっている一方、市場全体の総ハッシュレートは上がり続けています。
それにより、以前と比べて稼ぐことは難しくなりつつあるようです。
GMOインターネットにとって内部でコントロール可能な要因はせいぜい「より安価な電力を調達すること」くらいのもの。
これを受けて、GMOインターネットはマイニング事業における優先順位を変更する方針を決めています。
クラウドマイニングや自社マイニングなどのマイニング事業への投資を抑制し、より迅速に投資を回収できる「マイニングマシンの外部販売」を優先するというもの。
マイニングマシンは世界中に需要があるため、各地で積極的に販売説明会を行ない、すでに売り切れとなった機種もあるようです。
最後にGMOインターネットの財政状態をチェックします。
総資産7,532億円のうち、現預金は1,224億円となっています。
有利子負債は1,394億円と、現預金を上回っています。
証券業に関する資産や負債はそれぞれ4,592億円、4,088億円ありますが、これは金融事業(FXとか)によるもの。
キャッシュフローについても確認していきます。
今四半期は純利益が増加したことによって営業キャッシュフローがプラスに転じています。
投資キャッシュフローについては202億円のマイナスとなりました。
マイニング機器の購入などに160億円を費やしたことで、前年同期よりも支出が大幅に増加しています。
また、子会社のGMOペイメントゲートウェイが転換社債175億円を発行したため、財務キャッシュフローはプラスとなっています。
株価の推移を見てみます。
4月にメルカリのIPOが報道された後に急騰し、上場来の最高値を更新しました。
6月中旬のIPO後は下落を続けており、現在の時価総額は1,965億円となっています。