売上高46%成長のドライバーは『モンハン』ではなかった!「カプコン」2019年3月期1Q決算
カプコン

今回は『モンスターハンター』『バイオハザード』『ストリートファイター』などでお馴染みのゲーム会社「カプコン」の決算が発表されたので見ていきたいと思います。

早速ですが、四半期推移の売上高を見てみましょう。

カプコンの売上高は1Qから4Qにかけて増加する傾向はありそうな推移となっています。

2018年は3Qに減少したものの、4Qには467億円まで増加。

今期の売上は172億円、営業利益は51億円となっています。

前年同期からの成長率を見てみましょう。

今期の売上高は46%成長しており、売上が減少した2018年3Qを除けば大きく成長を続けていることがわかります。

営業利益率は前年同期の5.5倍と圧倒的な成長をしています。

カプコンの売上高の内訳を見てみましょう。

アミューズメント施設(ゲームセンターの運営)によって25億ほどの安定した売上がありますが、デジタルコンテンツ(ゲーム)による売上が大部分を占めています。

カプコンの売上はゲームの売れ行きに大きく依存していることがわかります。

売上が400億円を超えた2018年4Qに発売された『モンスターハンター:ワールド』はどのくらい影響を与えているのでしょうか?


忙しい人向け3行まとめ 

・カプコンの2019年1Qは売上高172億円(46.5%増)、営業利益51億円(551.3%増) 

・『モンスターハンター:ワールド』は830万本売上、カプコン史上の記録を更新  

・今期のモンハンは45万本販売して売上の試算は18億円、279万本は『モンスターハンター:ワールド』以外の旧作による売上


『モンスターハンター:ワールド』の売上はどれぐらいあるのか?

『モンスターハンター』シリーズは2004年プレーステーション2のゲームとして始まりました。

このゲームではプレイヤーはハンターとなり、きのこなどのアイテムを収集、モンスターの狩猟といったクエストをこなしていきます。

複数人でプレイできること、プレイヤーの知識や操作スキルが必要とされることなどがユーザーの心をつかみ、爆発的な人気となりました。

そうです。私も寝る間を惜しんで、毎日夜中まで知り合いと狩に行っていたことがあります。


『モンスターハンター:ワールド』は、2018年1月28日に発売されたモンハンシリーズの最新作です。

全世界で同時に発売開始されてから、わずか3日で販売本数550万本を突破

脅威的な人気がこの3日間の売上本数に表れています。

その後、7月30日時点で累計830万本を突破。

売上本数は750万本を超えたことで『バイオハザード5』を抜き、カプコン発のゲームとして歴代一位となっています。

売上高と販売本数からモンハンの売上高がどれくらいあるのか推測することができるので、計算してみたいと思います。


まずは今期のデジタルコンテンツ事業の売上の内訳を見てみましょう。


パッケージソフトとダウンロード(DLC)を合わせたコンソールゲーム全体の売上は121億円となっています。

一方で、ゲームの販売本数は次のようになっています。

今期の販売本数はダウンロードを含めて435万本。

そのうち『モンスターハンター:ワールド』の販売本数は45万本ほど(決算説明動画より)。

同様に、『ストリートファイター30thアニバーサリーコレクション』は60万本ほど売れたそうです。


売上121億円を本数で割ると1本あたりの平均単価は2,602円となります。

しかし、今四半期に売れたという3タイトルの定価(希望小売価格)をみると、次のようにバラバラです。

モンハン:8,980円(パッケージ版)、5,546円(ダウンロード版)

ストリートファイター(現時点で海外版のみ):Amazon.comで29.99ドル

バイオハザード:2,769円(プレステ4版)


価格帯でいうと、モンハンが他のタイトルに比べて2倍以上単価が高くなっています。

カプコンに入る売上には卸売も含まれるため、上記の小売価格よりも実際には安くなっている可能性が高い。


仮に、モンハンの平均単価を4,000円とすると、今四半期には18億円ほど売り上げていることになります。


以上の試算を前提とすると、デジタルコンテンツ事業の売上高の中で『モンスターハンター:ワールド』の割合はこのようになります。

2018年4Qは売上の72%を占め、今期は13%ほどを占めていることになります。

ただ、これはあくまでも試算のため、カプコン側の販売単価が違えばもう少し上下する可能性があります。


確実に言えることは、前4Qの増収は『モンハン』のおかげであるものの、今四半期の『モンハン』は全体の半分にも満たないということ。

先ほども登場した販売本数を見てみると、今期の旧作比率は74.7%なので旧作だけで324万本が販売されていることになります。

2018年4Qに発売された『モンスターハンター:ワールド』も旧作扱いなので、45万本を除く279万本がモンハン以外による売上となっています。

前年同期の旧作販売本数は185万本なので、『モンハン』を除いたとしても100万本近く増えていることになります。

これだけ旧作の売り上げ貢献度が高まった要因として、海外売上の躍進も関係がありそうです。

今四半期の海外の売上本数比率が85.1%とゲームの大部分は海外での売上となっています。


カプコンは、旧作の一部を上のように大胆に値下げすることで、製作したタイトルをより長く販売する施策をとっています。


営業キャッシュフロー300億はモンハン効果?

最後に、カプコンが市場からどう評価されているのかを見ていきたいと思います。

企業価値(EV)を計算するために、バランスシートを確認していきましょう。

総資産1,202億円のうち、現預金は456億円。

続いて、負債を見てみましょう。

借入金は合わせて96億円となっています。

カプコンは自己資本比率73%と非常に高くなっています。

今回の決算の前後で、株価は2697円から200円ほど上昇。市場は今回の決算を評価しているようです。

現在の時価総額は3,919億円なので、現預金と借入金を考慮すると企業価値は3,559億円

フリーキャッシュフローも計算してみましたが、ゲームのヒット頼りのため四半期ごとに大きなバラつきがあります。

2018年4Qには300億円近くありましたが、今期は16億円となっています。

この営業キャッシュフロー300億というとんでもない数字はモンハン効果なのでしょうか?

が、2017年4Qと2018年4Qでの利益差は27億円ほど、売上債権の増減による差が173億円。

2017年に増加した売上債権を2018年に回収したことで営業キャッシュフローがかなり大きくなっていました。



カプコンでは、これまでのゲーム開発以外にeスポーツ専門の部署も立ち上げています。

2018年の秋には自社主催のeスポーツ大会、 「CAPCOM Pro Tour ジャパンプレミア」を予定しています。

カプコンには世界的なファンの多く、大会もすでに多数開催されている『ストリートファイター』というブランドがあります。

世界的に成長が期待されるeスポーツ分野でも今後、大きな動きがあるかもしれません。