今日は世界最大の消費財メーカーとして知られるP&Gについて調べたいと思います。
P&Gにはシャンプーで知られるパンテーン、芳香剤のファブリーズ、お子様向けのパンパース、柔軟剤のダウニー、髭剃りのジレットなど、数多くのブランドを傘下に抱えています。
P&Gの歴史
P&Gの歴史は古く、1837年にまでさかのぼります。
イングランドからの移民だったウィリアム・プロクターと、アイルランドからアメリカに渡ったジェームズ・ギャンブルの二人は、アメリカの西部を目指して移動していましたが、それぞれの事情により断念。
どちらもシンシナティ州のクイーン・シティに落ち着き、ウィリアムはキャンディ作りを、ジェームズは石鹸作りによって生計を立てます。
ウィリアムとジェームズの妻は互いに姉妹であり、彼女たちの父親が義理の息子たちにビジネス・パートナーになるように持ちかけます。これが1837年であり、プロクター&ギャンブルの設立となります。
しばらくパートナーシップとしての運営が続いた後、1890年には外部資金も調達。
当初は石鹸メーカーとしての側面が強かったものの、1930年ごろから買収による事業拡大を加速し、現在のような形になりました。
主な買収・売却案件について調べたのですが、以下の31項目が見つかりました。
発表日 | 対象社名 | 取引額 | 種類 | 対象社の概要(ジャンル、事業領域など) |
2016年2月 | Duracell(to Berkshare Hathaway) | $4.7B | 売却 | 電池ブランド |
2015年10月 | Dolce & Gabbana beauty license(to 資生堂) | 売却 | 化粧品、香水のライセンス | |
2015年7月 | Max Factor,Cover Girl等43のブランド | $12.5B | 売却 | |
2015年3月 | Vicks | 売却 | 市販薬 | |
2014年 | DDFSkincare | 不明 | 売却 | |
2014年4月 | Iams, Eukanuba and Natura pet food brands in all markets except Europe | $2.9B | 売却 | ペットフードブランド |
2012年 | Pringles(to Kellogg's) | $2.75B | 売却 | スナックフード |
2010年5月 | Natura Pet Products | 買収 | ||
2009年12月 | MDVIP | 買収 | 富裕層向け個人医療サービス | |
2009年12月 | Ambi Pur | $470M | 買収 | 芳香剤のブランド |
2009年8月 | prescription-drug busines(to Warner Chilcott) | $3.1B | 売却 | |
2009年6月 | Zirh | $40M | 買収 | 高級男性化粧品ブランド |
2009年6月 | The Art of Shaving | 買収 | 高級髭剃り用製品ブランド | |
2008年9月 | Nioxin Research Laboratories | $300M | 買収 | ヘアケア商品の開発と製造。髪質を細くする製品も含む。 |
2008年 | Noxzema(to Alberto-Culver ) | 売却 | スキンクリーム製品(2010以降はユニリーバのブランド) | |
2007年1月 | DDFSkincare | 買収 | 皮膚科医によるスキンケア商品 | |
2005年 | the Dolce& Gabbana license | 買収 | ||
2005年1月 | The Gillette Company | $54B | 買収 | 剃刀製品のブランド |
2003年3月 | Wella AG | $5.9B | 買収 | ヘアケアブランド |
2001年 | The licence of Lacaste fragrance | 不明 | 買収 | ラコステのフレグランスライセンス |
2001年11月 | P&G-Clairol | $4.95B | 買収 | ヘアカラーブランド |
1999年10月 | Recovery Engineering | 買収 | 飲み水用フィルター等の販売 | |
1999年9月 | Iams | 買収 | 犬や猫用のペットフード | |
1997年7月 | Tambrands | 買収 | 生理用タンポン会社 | |
1994年7月 | Avon-Giorgio Beverly Hills | $150M | 買収 | フレグランス製品の販売 |
1991年 | Max Factor(from Revlon) | $1.5B | 買収 | 化粧品ブランド |
1990年6月 | Old Spice | $300M | 買収 | 男性用身だしなみ製品(デオドラント、ボディウォッシュなど) |
1989年11月 | Noxell Corporation | $1.3B | 買収 | 家庭用用品ブランド(Cover Girl=コスメブランドなど) |
1985年1月 | Richardson- Vicks | 買収 | a provider of Pantene, Oil of Olay, Vidal Sassoon and Clearasil products | |
1963年1月 | Folgers Coffee | 買収 | a manufacturer of consumers food and beverage products. | |
1930年1月 | Thomas Hedley Co | 買収 | 石鹸と蝋燭の製造 |
今や代名詞とも言える「パンテーン」シリーズを有したリチャードソン・ヴィックスを買収したのは1985年、シェービングブランドとして有名なジレットの買収は2005年のことでした。
2012年にはポテチのプリングルズをケロッグに売却したり、ドルチェ&ガッバーナの美容ライセンスを資生堂に売却したりと、事業の分割が進んでいます。
2016年に電池メーカーであるDuracellをウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイに売却しています。
Duracellはもともと、P&Gが2005年にジレットを買収した時にジレットの子会社として一緒に手に入れた事業でした。
近年、スピンアウトによる再編を進めていく中で、もともとジレットに投資していたバークシャー・ハサウェイに事業を売却するというのは興味深いですね。
また、この取引ではバークシャーが持っていたP&G株式と引き換えにDuracellを売り渡す、という形になっているのも特徴的です。
次に、全体の業績を見てみます。
2000年頃の売上高は400億ドル前後でしたが、2008年までに800億ドルを超えるまで大きく成長。
近年は事業売却やスピンアウトを積極的に行なっていることもあり、売上は650億ドルまで減少していますが、営業利益率は安定して15%以上をキープしています。
消費財というどう考えてもコモディティなジャンルの製品を販売していて20%の営業利益率があるというのは尋常なことではありません。
そこで、次はコストの対売上比率をみてみます。