はじめまして。つののこです。
外食産業は競争が非常に激しく、さらに、目まぐるしく変化する消費者のトレンドや景気変動などに対応できなければ、生き残ることは非常に困難な産業です。
そんな外食業界で、独自の戦略で安定成長を続ける「ヨシックス」についてまとめました。
沿革
株式会社ヨシックスは、1985年4月にテンガロンキッドとして設立。
同年12月にベストフードに、90年にヨシックスに社名変更しました。
その後、お好み焼き・鉄板焼き居酒屋「や台や」や、すし居酒屋「や台ずし」などを出店し、店舗数を拡大。
さらに着実に成長を続け、2014年にJASDAC・名証2部上場を果たしました。
16年には東証一部・名証一部へと市場を移し、2017年11月時点で、関東以西を中心に271店舗(2017年11月時点)を展開する外食チェーンとなっています。
主力ブランドと業績の推移
ヨシックスが展開する主なブランドを以下に挙げます。
「や台ずし」161店舗:本格職人にぎりずし居酒屋
「ニパチ」70店舗:280円均一低価格居酒屋
「これや」19店舗:串カツ居酒屋
「や台や」11店舗:お好み焼き鉄板居酒屋
(店舗数は2017年9月時点)
現在のヨシックスは、「や台ずし」と「ニパチ」の二本柱が軸となっているようです。
売上と利益の推移
まずは売上高と利益の推移を見てみます。
ご覧の通り、売上は2012年と比較して約2倍、経常利益も堅調な推移です。
経常利益率も10%超えで、業界の中ではかなり高い水準といえます。
ただし、増収増益というだけでは優良企業とみなすことはできません。
次はBSの方も見てみましょう。
バランスシート
2017年9月時点の貸借対照表です。
自己資本比率(自己資本÷総資本)は58.7%、流動比率(流動資産÷流動負債)は201.8%と、非常に安定性の高い財務状況といえます。
健全な財政基盤と、高い収益性を両立している超優良企業です。
キャッシュフローも見ておきましょう。
キャッシュフロー
2018年3月期第2四半期のキャッシュフローです。
投資に回したお金を使って、しっかりと本業で収益を上げている理想的な成長企業のキャッシュフローになっています。
財務諸表を見る限り、非の打ち所の無い完璧な経営です。脱帽です。
どの指標を見ても高水準。同業他社と比較しても、ここまでの優良企業はめったに無いです。
いったいどんな秘密があるのでしょうか。
次にヨシックスの戦略を調査してみましょう。
「田舎戦略」と「老舗理論」
ヨシックスは、以下のような「田舎戦略」と称する明確な出店戦略を持っています。
①年間を通して一定以上の安定的な居酒屋需要が見込める地域(東海道、山陽、九州新幹線に隣接する市町村・乗降客1万人以上の駅前、かつ従業員の雇用が可能な地域)に出店。
②30~40坪程度の中小型直営店舗を低コスト出店。
③地元店、チェーン店と競合せずに地域一番店を目指す。
この出店方針によって、地域に根付いた安定した売上の見込める地元小型店と、システムで統制された効率的なチェーン店の、両者の優位性をいいとこ取りできるというのです。
これをヨシックスは「老舗理論」と呼んでいます。
多くの外食チェーンは、売上を第一に考えて、集客の見込める市場の大きなエリアに、中~大規模店舗を出店します。
その結果、費用の地代家賃比率が高くなり、人件費や材料費などのコスト管理に非常に気を使うことになります。
一方、ヨシックスの田舎戦略では地代家賃比率を低く抑えているため、材料費や人件費に十分なコストをかけて、リピーターを定着させるのに足る質の良い料理を、お値打ち価格で提供できます。
これにより、1店舗あたりの売上は低くても、確実に高い利益率を保つことができます。
非常に合理的で、理想的ではあるのですが、「言うのは簡単、やるのは難しい」戦略です。
条件を満たす”ちょうどいい”立地に”ちょうどいい”お店を出店することは、おそらく他社が簡単に真似できることではなく、これを徹底して拡大し続けられるのは、ヨシックスの強さの一つでしょう。
ブランド転換と建築事業部
ヨシックスが持つ、他社にはないもうひとつの武器が、建築事業部の存在です。
実は、ヨシックスの代表である吉岡昌成氏は、もともとヨシオカ建装という建築会社を経営していました。
そこで建築の仕事をもらうために、某弁当チェーンとフランチャイズ契約をしたのがきっかけで、ヨシックスの前身となった飲食事業会社を立ち上げたという背景があります。
やがて飲食事業の方がメインになり、2007年、ヨシックスはヨシオカ建装を吸収しました。
このため、設計や建築、内装、改装といった、飲食店を経営するのに必要な投資を、社内だけでまかなうことが可能なのです。
建築事業部を有することで、低コストかつスピーディに出店・業態転換・撤退をすることができます。
出店時の投資を早期回収できるということは、キャッシュフローが安定し、新規出店や撤退の素早い判断にもつながります。
飲食店の場合、常に長く勝ち続けるために特に重要なのが、業態転換です。
消費者のニーズやトレンドは目まぐるしく変化しており、一時期の流行を的確に捉えると同時に、変化に柔軟に対応し続けることが非常に重要になってきます。
現在のヨシックスは、本格職人にぎりずし居酒屋「や台ずし」を中心にしたブランド展開をしていますが、2009~13年頃の不景気・デフレの時代には、280円均一低価格居酒屋「ニパチ」を中心に展開していました。
優秀な経営者によるスピーディで的確な判断と、それを実行する建築事業部があるからこそ、社会の変化に合わせた柔軟なブランド展開が可能になり、ヨシックスは確実に速度を上げて成長を続けているのでしょう。
いかがでしたでしょうか。
堅実な財務と高い収益性、それを支える明確な経営戦略、そしてそれを実現する経営資源。
全てを兼ね備えたヨシックスは、完璧と言っても決して過言ではないでしょう。
優れた経営手腕を発揮する代表の吉岡昌成氏は、2018年に64歳を迎えます。
今まさに、代がわりに向けて土台を築いているところでしょう。
少し気が早いかもしれませんが、次代の経営者は、ヨシックスをどのようにして成長させるのか。
今後も目が離せません。