事業内容
沿革・会社概要
SAP(エスエーピー、エスアーペー、サップ)はドイツ・ヴァインハイムに本社を置くビジネスアプリケーション企業。1972年、IBMドイツ法人出身のHasso Plattner(ハッソ・プラットナー)氏らエンジニア5名が「Systemanalyse und Programmentwicklung」を創業したのが始まり。1976年に社名をSAPに変更。1992年には日本法人を設立するなどグローバル展開を推進し、1998年にニューヨーク証券取引所へ株式上場を果たす。
SAPはM&Aによって多くのサービスを統合しており、2006年にコンプライアンスソリューション 「Virsa Systems」、2007年BIツール「Business Objects」、2010年データベース関連「Sybase」を買収した。また、2011年に人材管理「SuccessFactors」、2012年に購買ネットワーク「Ariba」、2013年コマース管理「hybris」、2014年には経費精算「Concur」、2018年CRM「Callidus」、2019年カスタマーエクスペリエンス「Qualtrics」をそれぞれ数十億ドル規模で買収し、SaaSプロダクトの強化を図っている。
事業内容
SAP(エスエーピー、エスアーペー、サップ)はSAP SEを親会社とし、264社で構成されている。SAPはERP(Enterprise Resource Planning)を中心としたアプリケーションの開発・販売を主な事業とし、オンプレミスおよびクラウドベースで事業を展開している。サプライチェーン、製造、調達、人事といったバックエンド向けに加えてCRMツールも開発しており、『SAP Cloud Platform』といったPaaSも提供している。
SAPの事業目的は、顧客が世界により良い経済、社会、環境を創造するために力を与えることであり、「世界がより良く営まれ、人々の生活を改善するのを支援する」ことある。またSAPの目標は、テクノロジーの進化をリードすると同時に、その成果と社会的影響に対して責任を負うことに焦点を当てていることを確実にすることとしている。
またSAPは、イノベーションの拡大を支援する概念として「インテリジェントエンタープライズ」を提示している。これは「従業員がより価値の高い成果に集中できるように人工知能(AI)、機械学習(ML)、モノのインターネット(IoT)、アナリティクスなどの最新テクノロジーを活用する企業のあり方」であり、顧客企業がこれを達成するために様々なサービスを提供している。
経営指標
SAPは「グロース」「収益性」「顧客ロイヤルティ」「従業員のエンゲージメント」を経営のパフォーマンスを図る指標としている。
具体的には、「グロース」においてはクラウド売上、クラウドおよびソフトウェア売上、総売上、「収益性」には営業利益、「顧客ロイヤルティ」には顧客NPS(ネットプロモータースコア)、「従業員のエンゲージメント」には従業員エンゲージメント指標をKPIに置いている。
製品・サービス
SAPの製品・研究開発・サービスは、「エクスペリエンス」「インテリジェンス」「オペレーション」の3つに分類できる。
エクスペリエンス
「エクスペリエンス」においては、エクスペリエンスマネジメント(XM)を提供する。
エクスペリエンスマネジメント(XM)とは、顧客、製品、従業員、ブランドというビジネスの4つのコアエクスペリエンスとテクノロジーの両方で発見されたギャップを探し出し、解決するための規律のことを指している。
2019年の「Qualtrics International」買収に伴い、SAPのサービスに『Qualtrics XM Platform』が追加された。『Qualtrics XM Platform』には、エクスペリエンスデータ(「Xデータ」)の分析を支援するXMの基礎部分である『Qualtrics CoreXM』、ユースケースをサポートし顧客へのフィードバック処理を支援する『Qualtrics CustomerXM』、従業員のフィードバックを収集し人事にアクションを提案して従業員のエクスペリエンスを向上させる『Qualtrics EmployeeXM』、ユーザーからのフィードバックに基づいて消費者の製品嗜好を特定する『Qualtrics ProductXM』、ブランドに対する消費者の感情を可視化する『Qualtrics BrandXM』といったサービスが含まれている。
インテリジェンス
2019年に導入された「ビジネステクノロジープラットフォーム」により、データベースとデータ管理『SAP HANA)』、アナリティクス『SAP Analytics Cloud』、アプリケーション開発と統合『SAP Cloud Platform』、インテリジェントテクノロジー(Internet of Things、機械学習、ブロックチェーン)の4つの領域にまたがるソリューションをクラウドプラットフォーム上で提供している。
データベースとデータ管理:
「データベースとデータ管理」では、「SAP HANA」により、データの取得やビジネスインテリジェンスを実現するための分析を提供する。これにより、企業は生きたデータを処理・分析し、最新の情報に基づいてビジネス上の意思決定を行うことができる。『SAP HANA』は自社内環境でもクラウド上の『SAP Cloud Platform』でも利用できる。また、自社内環境の『SAP Data Hub』とクラウドサービスの『SAP Data Intelligence』は、企業情報管理(EIM)ソリューションとして、データの理解、統合、整形、管理、関連付け、アーカイブ機能を提供する。これにより、社内の分散したデータを集積し、データの発見、改善、管理、調整が可能となる。
アナリティクス:
「アナリティクス」では、『SAP HANA』上で動作するクラウドアナリティクスソリューションである『SAP Analytics Cloud』により、ビジネスインテリジェンス、事業予測、事業計画を統合したサービスを提供する。この1つのソリューションにより課題の発見、分析、計画、予測を全て行うことができる。また、『SAP Business Objects Business Intelligence』によりリアルタイムで課題の発見と洞察を得られる。2019年にリリースされた『SAP Data Warehouse Cloud』は、データ統合、データベース、データウェアハウス、アナリティクスの機能を備えたクラウド型データウェアハウスソリューションである。『SAP BW/4HANA』は、『SAP HANA』上に構築された自社内環境のデータウェアハウスソリューションであり、従来のようなアプリケーション上ではなくデータベース上で直接データを処理する機能を提供する。
アプリケーション開発と統合:
「アプリケーション開発と統合」では、『SAP Cloud Platform』により、顧客がサードパーティーのクラウドソリューションを構築するためのプラットフォームやツール、サポートを提供している。
インテリジェントテクノロジー:
「インテリジェントテクノロジー」では、『SAP Leonardo Internet of Things』によりIoT技術を、『SAP Leonardo Artificial Intelligence』により人工知能(AI)技術を、『SAP Leonardo Blockchain』によりブロックチェーン技術を提供する。これらの技術は他のSAPソリューションに組み込まれて使用されている。
オペレーション
顧客サービス部門:
顧客サービス部門では、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)ソリューションである「SAP C/4HANA」により、顧客企業のコマース、マーケティング、サービス、販売、顧客データ管理支援を提供する。
SAP S/4HANA部門:
「SAP S/4HANA」部門では、『SAP HANA』上で動作するERP(Enterprise Resource Planning)ソリューションである『SAP S/4HANA』を提供し、顧客企業の人事、販売、サービス、調達、製造、資産管理、研究開発、デジタルサプライチェーン管理、リスク管理などを支援する。『SAP S/4HANA』はSAPの他サービスや他社サービスに接続することができる他、SaaS上や自社内環境上、プライベートクラウド上、あるいはハイブリッド環境上で利用できる。
サプライチェーン部門:
サプライチェーン部門では、『Integrated Business Planning for Supply Chain』ソリューションにより、『SAP HANA』と連携し、販売業務計画、需要、供給反応プラニング、在庫最適化を支援する。
製造部門:
製造部門では、『Intelligent Asset Management』ソリューションにより、製造サイクル上の製品に関する戦略の定義、計画、モニタリングを支援する。
人事部門:
人事部門では、『SAP SuccessFactors』ソリューションにより、人材開発、管理、エンゲージメント、エンパワーメントを支援し、労働力の価値を向上させる。
調達部門:
調達部門では、『SAP Ariba』ソリューションにより、調達・購買業務プロセスの効率化を支援する。また、『SAP Fieldglass』ソリューションは非正規要員、外部人事、サービスの管理をサポートする。『SAP Concur』ソリューションでは出張・調達・派遣スタッフなどから発生する経費情報をリアルタイムに把握することができる。
加えて、SAPは、イノベーションや専有情報の知的財産権の保護に積極的に取り組んでおり、研究開発への投資により、数多くの特許を取得している。2019年12月31日時点で、SAPは世界中で合計10,270件以上の有効な特許を保有。そのうち924件が2019年に付与・有効化されたものとなっている。
事業アプローチ
SAPは「継続的イノベーション」「隣接的イノベーション」「変革的なイノベーション」の3つに投資を行っている。
「継続的イノベーション」では既存の製品を少しずつ改善していくこと、「隣接的イノベーション」では新規顧客を獲得するために、新しい技術を使って既存のポートフォリオを強化したり、既存の知識を新しい市場に適用したりすること、「変革的なイノベーション」では新しいトレンド、技術、ビジネスモデルの結果として発生するイノベーションを表している。