Slack Technologies, Inc.【WORK】 NYSE

Slack Technologies, Inc.【WORK】 NYSE

事業内容

沿革・会社概要

Slack Technologies, Inc.(スラック)は米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くビジネスチャットサービス企業。2013年、「Flickr」創業者のStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏が設立したTiny Speck社でゲーム開発の経験を経て社内コミュニケーションツールに着目し、てプロトタイプを開発したことを始まりとする。2013年8月に初期バージョンをリリースし、わずか24時間で8,000社もの顧客を獲得。2014年2月に『Slack』をパブリックローンチした。

2015年1月よりPlus Planの提供を開始し、同年9月にSalesforceとパートナーシップを締結。2017年1月に大規模組織向けのEnterprise Grid Planをローンチし、日本やドイツなど海外展開を本格化させる。2018年7月、Atlassianと提携して『HipChat』事業を買収。2019年6月、資金調達を伴わないダイレクト・リスティングによってニューヨーク証券取引所へ株式上場を果たす。

創業者、スチュワート・バターフィールド

Slackの創業者であるスチュワート・バターフィールドは所謂シリアル・アントレプレナーだ。2002年に創業した写真共有サイト「Flickr」は米ヤフーによって買収された。

その生い立ちはとてもユニークだ。ルーツは欧州のポーランド。祖父はナチスから逃れるためにアメリカに移住したが、ポーランドに残った家族は皆ホロコーストの犠牲になったという。

移民1代目だった祖父は死に物狂いで働き、息子(バターフィールドの父)をハーバード大に入れる。ところが彼は1968年に深刻化したベトナム戦争に徴兵されてしまう。バターフィールドの父はなんと軍隊を脱走し、カナダに移住。そこで出会った女性と結婚し、生まれたのがバターフィールドだ。

アメリカに幻滅していた両親は野生的な生活を営むヒッピーに身をやつし、1973年にバターフィールドが生まれたときには電気や水道などのライフラインのない漁村で生活していた。バターフィールドは自給自足をする家庭で育ち、シャワーはいつも外で浴びていたという。

1977年、都市に移住した両親はなんと不動産事業で成功。7歳のバターフィールドにパソコンを買ってあげた。こうして無事にパソコンにハマったバターフィールドは、独学でコーディングを習得する経験をえた。

このように、Slack創業者のバターフィールドはとてもユニークな生い立ちをしている。

続きはこちら「3歳まで水道、電気なしで生活!Slack創業者「スチュワート・バターフィールド」の半生

事業内容

Slack(スラック)は、ビジネスチャットおよびメッセージング・プラットフォームをクラウドベースで提供している。Slackは、世界最大規模の組織にも対応できる安全でエンタープライズグレードの環境を構築しており、チームの連携、システムの統一、ビジネスの推進に利用される。

Slackは、ビジネス・テクノロジー・スタックの新しいレイヤーであり、人々がより効果的に連携し、他のすべてのソフトウェア・ツールやサービスを接続し、最高の仕事をするために必要な情報を見つけ出すことができる。

Slackが提供するメッセージング・プラットフォームの最も有用な説明は、組織内でのEメールの使用を置き換えるものであることが多い。電子メール(またはインターネットや電気)のように、Slackは非常に一般的で幅広い適用性を持っている。それは特定の目的に向けられたものではなく、仕事上で発生するほぼすべてのコラボレーションが対象となる。Slackは、求職者のレビュー、選挙取材の調整、ネットワーク問題の診断、予算の交渉、マーケティングキャンペーンの計画、メニューの承認、災害対応チームの組織化、その他数え切れないほどのタスクに使用されている。

ビジネスモデル

Slackは主にビジネスチャット『Slack』の利用に伴うサブスクリプション・プランの提供によって収益を得ている。ビジネスチャットは無料で利用開始できるが、高度な機能を利用するためには有料のサブスクリプション・プランを契約する必要がある。有料顧客は通常、Slackに登録しているユーザー数に応じて、月額または年額で支払いを行う。

SlackのGo-to-Market戦略は、『Slack』プラットフォーム上の組織に対して優れた製品とサービスレベルを提供することを中心に据えてきた。Slackでは、セルフサービスの提供とダイレクトセールスの両方を行っており、ユーザーは『Slack』を無料でお手軽に利用開始できる。セルフサービスモデルでの購入を望まない顧客や、Slackのエンタープライズ向け製品の追加機能を必要とする顧客にも対応している。

Slackのダイレクトセールスとカスタマーサクセスの専門家は、組織内での導入と拡大を成功に導くことに注力している。ユーザーの深いエンゲージメントとカスタマー・エクスペリエンスへのこだわりが、組織内での有償採用を拡大するための触媒となっている。

Slackでは、Slackを利用する組織を、企業、教育機関、政府機関、または企業の別個のビジネスユニットなど、無料または有料を問わず、サブスクリプションプランを利用している別個の組織と定義している。組織が有料サブスクリプションプランを利用しているユーザーが3人以上いる場合は、そのユーザーを「Paid Customer(有料顧客)」としてカウントしている。

これらのPaid Customersの多くは数千人のアクティブユーザーを抱えており、Slack最大のPaid Customersは数十万人の従業員が日常的にSlackを利用している。Slackを利用している組織の数は非常に多様化しており、2020年1月期を含めた過去3年間において、収益の3%を超えるPaid Customersは存在しなかった。

Slackのユーザーは、無料または有料のサブスクリプションプランを利用しているかどうかにかかわらず、高いエンゲージメントを持っており、2020年1月31日に終了した週のSlackのグループ・アクティブ利用時間は5,000万時間を超えている。同週には、14億を超えるメッセージがSlackで送信された。この期間中、一般的な平日に、有料会員のユーザーは平均して9時間以上、少なくとも1つのデバイスを通じてSlackに接続し、87分をSlackのアクティブな利用に費やしていた。

幅広いアクティブなユーザーベースと深いユーザーエンゲージメントが、組織内での導入を促進し、多くの組織がPaid Customersになるきっかけになると信じている。Slackにおけるダイレクトセールスとカスタマーサクセスへの取り組みは、ユーザー数やチーム数が多く、時間の経過とともに利用時間が増加する可能性のある大規模な組織に焦点を当てている。

Slackのビジネスが成熟するにつれ、ダイレクトセールスによる売上は拡大傾向にある。Slackでは、大企業内での採用と大企業への拡大の指標として、年間経常収益(ARR)10万ドル以上のPaid Customers数を測定している。

提供プラン

Slackは、ユーザーの多様なニーズに応えるために、4つのサブスクリプションプラン「Free」「Standard」Plus」「Enterprise Grid」を提供している。

「Free」「Standard」Plus」の各サブスクリプションプランは、1つのワークスペースで構成されており、チーム用に設定されたSlack環境と定義している。これらのプランは、中小規模のチームに多く採用されている。場合によっては、「Enterprise Key Management」などの追加機能を提供し、Slackを利用する組織の特殊な要件に対応している。

Slackの「Enterprise Grid」プランは、大規模な組織向けに独自に設計されており、一般的にはより複雑で、強化された機能、柔軟性、管理制御、セキュリティを必要とする大規模な組織向けとして提供される。複数のワークスペースとぶら下がるチャネルのセットを無制限に作成して管理することができるほか、管理下にある複数のワークスペースを横断的に検索し、作業者や管理者が組織の集合的なナレッジを簡単に大規模に利用することを可能としている。また、企業のデータの安全性を確保するための集中管理にアクセスし、管理者はSlackのプロビジョニングと管理を単一のダッシュボードで実現できる。そのほか、サードパーティのe-Discoveryやデータ損失防止ツールと統合して、セキュリティとコンプライアンスの要件を満たすこともできる。

KPI・経営指標

Slackでは、「Organization(組織)」を、企業や教育機関、政府機関、または企業の別個のビジネスユニットなどの別個の事業体として定義しており、無料または有料を問わず、サブスクリプション・プランを利用している。組織が有料のサブスクリプション・プランに3人以上のユーザーを持つ場合、Slackはそれらを「Paid Customer(有料顧客)」としてカウントし、有料顧客数を開示する際には、1,000人未満を切り捨てている。

Paid Customers(有料顧客)

Slackの有料会員基盤の成長は、Slackの価値提案を反映しており、将来の成長に向けた現状を把握するための重要な指標として計測している。「Paid Customers(有料顧客)」は時間の経過とともに導入が拡大しており、Paid CustomersによってSlackの認知度を高められ、新しい組織によるオーガニックな導入につながっている。

Slackはさまざまな業界のニーズに合わせた機能を継続的に構築してきたことで、SlackのPaid Customersには、幅広い業界のあらゆる規模の組織が含まれている。

Paid Customers >$100,000(ARR10万ドル以上の大規模顧客)

Slackでは、ARR10万ドルを超えるPaid Customersの増加に重点を置き、Slack上の組織とのスケールアップや、より大きな組織をSlackに引き付ける能力を測る指標としている。大規模顧客を増加させる能力は、有料会員内のユーザー数の拡大、大規模組織が必要とする機能の提供、ダイレクトセールスの育成など、Slackの事業成長の重要な指標となっている。

Slackでは、「Paid Customers >$100,000(ARR10万ドル以上の大規模顧客)」を、対象期間終了時点でARRが10万ドルを超えていた有料サブスクリプション・プランを契約する組織と定義している。

ARRは、対象期間終了時の直近月の月次経常収益(MRR)に12を乗じたものに基づいている。利用状況に基づいて毎月または四半期ごとに請求が調整されるタイプのサブスクリプション契約を締結しているPaid Customersの場合、MRR は「割引を含む毎月の定額使用料金に月末時点でのアクティブな定額使用数を乗じて」計算される。固定料金を定め、使用状況に依存しないタイプのサブスクリプション契約を締結しているPaid Customersの場合、MRR は「割引を含む月額使用料に購入した契約数を乗じる」ことで計算される。

Net Dollar Retention Rate(NRR:ドルベース顧客継続率)

Slackは、Slackのオーガニックな収益成長の補足的な指標として、「Net Dollar Retention Rate(NRR:ドルベース顧客継続率)」を開示している。NRRは、Slackのサブスクリプション契約の長期的な価値、およびPaid Customersを維持し、そこからの収益を成長させるSlackの能力についての洞察を提供する重要な指標として位置付けられる。

Slackでは、期末時点でのNRRを、期末時点において12か月以上利用を継続しているすべてのPaid Customersからもたらされる対象期間末月のMRR、および前期末月のMRRから計算している。ただし、前期に無料プランのみを利用していた組織や当期中に有料プランに変更した組織を含む、当期の新規Paid Customersからの収益は対象期間末月のMRRから除外している。

NRRは、「対象期間末月のMRR」を「前期末月のMRR」で割ることによって算出する。SlackのNRRは、ここ数年で収益基盤が拡大し、既存の長期的な有料顧客への浸透度が高まったため、次第に低下傾向にある。

主要な機能

Messaging & Channels(メッセージ、チャンネル)

Slackユーザーは、チャンネルにメッセージを投稿したり、個人やグループに直接メッセージを送信したりすることで、お互いにコミュニケーションを取ることができる。Slackの中心的な組織原理はチャネルであり、適切な人たちを集めて共同作業や情報の共有、仕事の成果を得ることができる。

チャンネルは柔軟性があり、プロジェクト、トピック、チームなど、特定のタスクや状況に適したものであれば何でも編成することができる。「パブリックチャンネル」は、Slackワークスペース内のすべてのユーザーがアクセスできる。より排他的なワークストリームや会話をしたい場合は、招待制の「プライベートチャンネル」を作成することも可能。

チャンネル内では、ユーザーはメッセージ、ドキュメント、画像を投稿でき、他のソフトウェアと連携した機能も利用できる。ユーザーは、トピックやプロジェクトに関する情報を検索し、関連するチャンネルを見つけて参加したり、チャンネルの全履歴をスクロールしてメッセージや文脈に沿ったコンテンツを見つけたりすることができる。

Slackでは、ユーザーがサービスの利用方法を最適化することができ、通知を受け取るタイミングを選択したり、人、キーワード、チャンネル、アプリケーションごとにアラートをカスタマイズしたりすることができる。

Integrations(統合)

サードパーティ製および社内で構築されたソフトウェアアプリケーションとの統合により、Slackのユーザーは、チャンネル内で他のアプリケーションからの情報に簡単にアクセスし、相互連携によるワークフローを実現できる。Integrationsにより、Slackユーザーは仕事の生産性を高め、他のソフトウェアプログラムの価値を高めることができる。

例えば、ユーザーはSalesforceで顧客のアカウント情報を調べたり、Slack内のGitHubでデプロイメント状況の更新情報を取得したりすることができる。

さらに高度なユースケースとしては、「カスタム・ワークフロー」を設計する機能があり、これにより、連携していないソフトウェア・アプリケーションの一連のタスクやアクションをSlackで自動的に実行することができる。例えば、Slack内の「Workflow Builder」機能を利用して顧客サービスのチケットルーティングアプリケーションを作成することで、ユーザーはSlackから離れることなくZendeskのチケット情報やSalesforceの顧客データ等を集計することができる。

Shared Channels(共有チャネル)

Slackは、共有チャンネルやゲストアカウントを介し、組織間のコミュニケーションやコラボレーションを可能にしている。共有チャンネルは、異なる組織のSlackワークスペースを安全に接続し、Slackが組織内・チーム内と同じレベルで企業間コミュニケーションとコラボレーションを実現している。

共有チャネルは、パブリックまたはプライベートチャンネルで作成することができ、Slackの強力なツールや統合機能のすべてに加えて、組織間の情報の流れを規制し、監視するための管理機能を追加することができる。ゲストアカウントを使用すると、ワークスペースのオーナーは、組織外のユーザーを1つまたは複数のチャンネルに招待することができる。

2020年1月待つ時点で、32,000人以上のPaid Customerが共有チャネルを採用している。この機能の採用は、ネットワーク参加者数とネットワーク密度の両面で、今後数年で大きく拡大するポテンシャルを秘めている。共有チャンネルによるネットワーク効果は、Slackを利用している組織にとっても、Slackを初めて利用する組織にとってもSlackの価値を高めるため、共有チャネルは既存ユーザーにとってより多くの有用性を生み出し、今後の成長の重要な要素となるとしている。

Search(検索)

Slackでは、メッセージ、アプリケーションからの投稿、ファイルや各種コンテンツなど、すべてのものが検索可能であるため、検索機能の利用を許可されたユーザーは会社の知識を活用し、必要なときに情報を見つけることができる。Slackを使用することで、組織が生成した情報のアーカイブが作成され、アーカイブは普遍的に利用可能で、永続的で、文脈に沿ったものになるため、Slackの検索機能はますます便利になっていく。

Slackの検索機能は、さまざまなフィルターや修飾機能を提供しており、ユーザーは潜在的に膨大な情報のリポジトリから特定の知識に簡単かつ効率的にアクセスすることができる。また、機械学習を活用して、ユーザーが最も頻繁にコミュニケーションを取る可能性のある相手や、ユーザーにとって最も関連性の高いファイル、ユーザーが参加する傾向のあるチャンネルなど、ユーザーの行動やコンテキストに基づいてパーソナライズされた検索結果を提供している。

プラットフォーム

Slackの技術プラットフォームは、独立系ソフトウェア開発者や組織が、既存のソフトウェアをSlackに統合したり、Slackユーザーに新機能を提供する全く新しいアプリケーションを構築したりできるようにすることを目的として構築されている。サードパーティ製ソフトウェアや社内ソフトウェアとの統合により、Slackのプラットフォームが強化され、幅広いアプリケーションへの簡単で直感的なアクセスを提供することができる。

Slackのプラットフォームは、オープンで文書化されたAPI、開発者ツール、およびSlackのガイドラインを満たしたアプリをリストアップする『App Directory』で構成されている。Slackの組織は、シンプルな通知から複雑な社内ワークフローまで、Slackのプラットフォームを使用して社内アプリケーションや統合を作成している。サードパーティの開発者は、既存の顧客が自社製品とのエンゲージメントを容易にするだけでなく、新規顧客を見つけるための統合やアプリケーションを構築している。

2019年には、すべてのユーザーに適しており、技術的ではないシンプルなユーザーインターフェースに基づいて、統合やワークフローを完全にSlackで作成するためのローコードソリューションである「Workflow Builder」を導入した。

Slackの『App Directory』には、ナレッジワークのほぼすべての側面に対応するアプリケーションと統合がリストアップされている。

これらのアプリケーションや統合機能は、世界最大級のテクノロジー企業から小規模の新興企業まで、Slackユーザーをソフトウェアにシームレスに接続することを実現する。Slackは、専用のSlack APIサイト、オープンソースフォーラム、ソフトウェア開発キット、グローバルな開発者イベント、パートナーシップ、自社で開発している開発者や『App Directory』へのアプリ掲載を目指している開発者向けの技術サポートなどを通じて、プラットフォームのエコシステム拡大を促進している。

営業戦略・マーケティング戦略

Slackは、ウェブベースのセルフサービス型のGo-to-Marketアプローチと、大規模な組織内でのユーザーの拡大と新規の大規模な有料顧客の獲得に焦点を当てたダイレクトセールスの取り組みを組み合わせて事業拡大を図っている。セルフサービスのユーザーはダイレクトセールスチームのリードとなり、大企業内のユーザーは組織内外でSlackのオーガニックな認知度を高めている。私たちは、これらの営業・マーケティング活動を補完するために、カスタマーエクスペリエンスとカスタマーサクセスを重視している。

Self-service adoption and marketing(セルフサービスによる導入とマーケティング活動)

Slackを利用する多くの企業はセルフサービスによるGo-to-MarketアプローチをSlack導入のきっかけとしている。Slackは初期の認知獲得と導入を促進するために、さまざまなマーケティング戦略と戦術を展開している。これらには、ブランド広告、広報、デジタルマーケティングキャンペーン、製品のローカリゼーション、製品内の顧客教育、新規ユーザーにSlackを紹介するためのWebサイトなどがある。

Slackを利用している組織は多様で、企業から非政府組織、大学、スポーツクラブ、オープンソース・コミュニティまで多岐にわたる。その多くは、『Slack』の無料版を利用することからSlackのプラットフォームに加わる。無料版ユーザーがSlackの価値に気づくと、ネットワークや組織内でオーガニックにSlackの情報が広まっていくという好循環が生まれる。

組織がコラボレーションやコミュニケーションにSlackを使用したり、Slackのプラットフォームを介してサードパーティや社内で開発したソフトウェアをより多く統合し、Slackをより深く利用するようになると、SlackのWebサイトを介して有料プランにアップグレードするようになる。また、共有チャンネルや強化されたセキュリティ機能、管理機能などの機能を利用するために、有料プランにアップグレードすることもある。

Slackでは、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンや、有料プランに追加されたメリットや機能を強調した製品内プロンプトを通じて、このようなアップグレードニーズをサポートしている。

Direct sales & marketing(ダイレクトセールス、マーケティング)

大規模なPaid Customers内での採用を増やし、新規の有料顧客を獲得するために、Slackはダイレクトセールスを活用している。Slackのダイレクトセールスは、セルフサービスの採用を通じて開発されたコンセプトの実証を活用している。Slackでは、ボトムアップ需要と、C-Suiteのエグゼクティブやビジネスユニットのリーダーを対象としたダイレクトセールスの取り組みを組み合わせている。

ダイレクトセールスの取り組みには、グローバルに分散したダイレクトセールスチーム、ソリューションエンジニアリング、需要創出キャンペーン、ウェビナー、アナリストリレーション、C-suiteイベント、パートナーとの協力的なマーケティング活動などがある。また、年に一度のユーザーカンファレンス『Frontiers』を開催し、世界中の組織やパートナーを集めて、組織の連携を実現するためのベストプラクティスを共有したり、最新のSlack機能を公開したり、ユーザーを教育したり、アプリケーション開発者やプラットフォームのエコシステムを活用したりしている。

Customer experience and customer success(カスタマーエクスペリエンス、カスタマーサクセス)

Slackのカスタマーエクスペリエンスチームは、無料版と有料版の両方のSlackのユーザーにサポートを提供し、ユーザーの採用、無料版から有料版への転換、サブスクリプションの更新を促進するための中心的な役割を担っている。また、カスタマーエクスペリエンスチームは、規模の大きな組織からSlackに関するフィードバックを受け取り、数値化している。このように応答性と個人的な対応に重点を置くことで、顧客満足度を最適化し、ユーザー面と社内の製品改善の両方で価値の高い機会を特定することができる。

Slackが提供する教育サービスには、Slackの使用方法、管理、最適化、カスタマイズ、他のアプリケーションの統合、カスタムワークフローの構築、全く新しいアプリケーションのSlack上での構築方法などについての無料のWebベースのクラスやチュートリアルが含まれる。また、開発者リレーションシップ・プログラムやSlackを利用した組織向けイベントでの対面トレーニングも提供している。

Slackのカスタマーサクセスチームは、大規模な組織がSlackを利用するまでのすべてのステップをサポートしている。これは、オンボーディング、ワークスペースのベストプラクティス、変更管理、教育のサポートから始まり、更新や他の機能チーム、部門、ビジネスユニットへの拡張にも対応している。さらに、Slackを利用している組織のニーズに合わせた専門的なサービスも提供している。

競合

Slackのようなビジネスコミュニケーションサービスの市場は立ち上がったばかりで、急速に進化し、細分化しており、Slackはビジネステクノロジーの新しいカテゴリーとして位置付けられる。その結果、Slackは主に、Microsoftなどの既存ベンダーのコラボレーション・コミュニケーションツールや製品、Googleなどの生産性ツールやメールプロバイダー、Cisco Systemsなどのユニファイドコミュニケーションプロバイダー、Facebookなどのビジネスソフトウェア市場に参入したコンシューマーアプリケーション企業と競合している。

また、Slackが対処している特定の問題に対処しようとするニッチ製品やポイント製品を提供している中小企業とも競合している。これらの中小企業には、音声やビデオコミュニケーション、インスタントメッセージング、電子メールフィルタリング、電子メール受信箱の整理、ビジネスワークフロー、チームベースのコラボレーション、イントラネットの作成と保守、その他の機能に特化した企業が含まれている。

これらの企業の中には、無料または割引サービスを提供しているところもありる。小規模な競合企業は、独自の機能と機能の組み合わせを提供しておらず、大量のユーザー、使用量、データを処理するための拡張性が実証されているため、Slackは小規模企業に対して有利に競争できると考えている。

Slackの市場は、技術の変化、顧客ニーズの変化、新規参入、新製品や新サービスの頻繁な導入などの影響を受ける。Slackがサービスを提供する市場への参入や、Slackが解決しようとしている問題への対応、顧客の要件の進化、新製品、技術、規制の導入など、既存企業や新興企業の参入が続くにつれ、競争が激化すると予想される。さらに、競合他社の中には、Slackよりも長い事業歴を持ち、幅広い製品やサービスをバンドルする能力を持ち、より多くの販売・マーケティング予算を持ち、より多くの既存ユーザーベースへのアクセスが可能で、財務、技術、その他のリソースがSlackよりも豊富な企業も存在する。しかし、Slackは競合他社よりも迅速に技術革新を行い、新しい技術や顧客の要求に対応することができる独自の立場にあると考えている。

競争優位性

Singular focus(シンプルなミッションへのフォーカス)

Slackの開発、設計、パートナーシップ、カスタマーエンゲージメント、投資は、Slackの巨大かつシンプルなミッションである「人々の仕事生活をよりシンプルに、より快適に、より生産的にする」を実現することを目標としている。Slackには、レガシー製品や競合する優先事項はない。Slackのプラットフォームには、十分に幅広い用途があり、市場規模も十分に大きいため、掲げたミッションの実現に向けた事業活動のみにフォーカスし続けることができるとしている。

Scale and market leadership(規模と市場のリーダーシップ)

Slackのビジネスコミュニケーション市場におけるリーダーシップの強さは、ユーザーの規模と成長、ユーザーベース内でのエンゲージメントの高さ、組織内での成長、Slackと統合するアプリケーションの幅の広さ、開発者エコシステムの規模によって示されている。組織がSlackのようなプラットフォームをどのように利用しているかについては、Slack自身が世界で最も理解しており、その知識をより迅速に活用している。

Strong increasing returns dynamics(継続利用による利用価値の増大、ネットワーク効果)

組織内でSlackの使用量が増加すると、既存のすべてのユーザーだけでなく、参加する可能性のあるユーザーが増えるごとに、より多くの価値が生まれる。組織が時間をかけてSlackを使い続けることで、アーカイブの価値が高まり、より多くの有用性を実感できるようになる。

組織間でチャネルを共有することで、新しい組織が参加するたびに、既存のネットワーク・メンバー全員と同様に、Slackネットワーク全体の価値が高まっていく。また、Slackに参加するユーザーや組織が増えれば、開発者にとっての価値も高まるほか、Slackのプラットフォームに統合されたアプリや構築されたアプリが増えれば、より多くのユーザーや組織がSlackを活用することになる。

Customer love leading to stickiness and organic expansion(ブランドへの愛着とスティッキネス、アップセル)

ユーザーはSlackを使うことに愛着を持っており、多くの人が組織内でより広く使うための支持者となっている。また、転職したり、まだSlackを使っていない組織に入ったりしたときにも、Slackを推奨する傾向がある。Slackは何千ものツイートやその他パブリックスペースでの支持や推奨が行われており、エンタープライズ・ソフトウェアの中でも特筆すべき成長スピードを実現している。

Differentiated go-to-market strategy(差別化されたGo-to-Market戦略)

ユーザーがSlackのメリットを実感することで、オーガニックな成長がもたらされている。セルフサービス・カスタマー・エンゲージメント・モデルを通じて、無料および有料のサブスクリプション・プランの新規組織や見込み顧客を惹きつけている。

また、新規組織やセルフサービス・チャネルでSlackを導入した既存の組織を対象としたダイレクトセールスも推進している。アップセルの見込みがある組織を特定した後は、SlackのダイレクトセールスチームとカスタマーサクセスチームがSlackの採用を拡大し、より大規模な展開を目指している。

Customer-centricity as the fundamental tenet of our company(顧客中心主義)

Slackは、本質的なニーズを中心にソフトウェアとユーザーインターフェースを構築する。さらなる利便性の向上を目指し、ユーザーのニーズを先取りするために最善を尽くしている。ユーザーへの共感と敬意は、Slackの価値観の中に組み込まれており、この考え方は、より広範な販売と顧客との関わり方のモデルにまで及んでいる。

Slackでは、無料および有料のサブスクリプションプランのカスタマーサポートに重点を置き、Slackにとって重要かつ戦略的な必須事項として扱っている。Slackの社内データによると、Slackのカスタマーエクスペリエンスチームと交流したユーザーは、そうでないユーザーに比べて8倍もの確率で有料ユーザーになるという結果が出ているという。


2020年1月期 Annual Report FORM 10-K(提出日:2020年3月12日)

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