米アパレル業界に逆風?SPAのパイオニア「Gap」に何が起こっているのか
メーカーでありながら消費者への小売も行う「製造小売」。中間マージンを排した収益性の高さや、需要を製造に反映しやすいことなどが特徴とされる。アパレル業界を中心に、この数十年で大きく存在感を高めてきた。
その発端は1986年、アパレル企業のGapが自らの新たな事業モデルを「Speciality store retailer of Private label Apparel」と表現したこと。やがてアパレルにとどまらず、家具や食品、化粧品など様々な分野に広がった。
そんなSPAのパイオニアであるGapが現在、業績の悪化にあえいでいる。
従来のGapは、決して収益性の低い企業ではない。売上高こそほとんど横ばいだが、営業利益率は長く10%前後を維持。金融危機のあった2009年にも黒字を保ち、成熟した企業として収益を株主に還元してきた。
2020年に起こったコロナ禍は、Gapにとって未曾有の逆風となった。1991年までデータをさかのぼっても、他に営業赤字の年はない。2001年にわずかな最終赤字(純損失)を計上したのみである。
逆風となりそうな要素はいくつも思い浮かぶ。コロナ禍を境とした生活様式の変化、D2Cなど新たなブランドの台頭、若い消費者の嗜好の変化など。今回の記事では、そんな同社の「一言で言ってカオス」な近況について紹介する。