世界で最もハイコストな医療制度!米国にはなぜ「国民皆保険」がないのか
日本では当然の「国民皆保険」。全ての国民が公的医療保険に加入することで、いざというときの高額な医療費負担を軽減できる。しかしこの制度、世界的には決して「当たり前」のものではない。
特に際立つのはアメリカ合衆国だ。米国の医療費は世界で最も高額なことが知られ、対GDP比での国民医療費は約20%にのぼる。英国や日本、フランスといった主要先進国と比べてもはるかに高い水準だ。
そんな米国において特徴的なのが「国民皆保険」制度の不在である。高齢者向けの「メディケア」、低所得層向けの「メディケイド」はあるものの、それ以外はもっぱら民間でまかなう。
その結果が莫大な医療費である。医療費負担が増大しつつあるのは日本も同様だが、大きく異なるのが「個人への負担」だ。米国では「医療負債」も年々拡大し、2019年にその金額は1,950億ドルにのぼった。
皆保険制度のない米国の医療制度の成り立ちには、政治的・経済的な歴史が大きく関わっている。今回はその経緯を紹介するとともに、それによって出来上がった医療産業がどのようなものか概観する。