DocuSignと言えば、パンデミックで大きな追い風を受けた企業の一つだ。「電子契約」というカテゴリのパイオニアで、長きにわたって安定した成長を続けてきた。
2020年からのコロナ禍では成長が加速したが、その後は鈍化した。市場からの評価は厳しく、株価はピーク時の五分の一以下に下落。前CEOダン・スプリンガーは辞任し、マギー・ウィルダロッター会長が暫定CEOの座についた。
やがて連れてこられたのが、新CEOのアラン・チューエセンだ。チューエセンは決算コールの場で「事業の転換が遅かった」と旧経営を両断。一方、電子契約というカテゴリには「次の段階」があるとアピールした。
今回の記事では、新CEOのもとでDocuSignがどう変わろうとしているかを解説する。そこに見えるのは、電子契約ツールのパイオニアが、「同意」というプロセスをどうやって更に進化させていくかという未来像である。
DocuSignを取り巻く事業環境は、昔と比べて大きく様変わりした。パイオニアとして市場を開拓した昔とは異なり、今や「電子契約ツール」は使われて当然の存在となった。
Adobeの「Acrobat Sign」は、巨大企業としての地位を活かして存在感を高めつづけている。何より恐ろしいことに、Microsoftの「Office 365」と戦略的連携を締結。Adobe自身も「Microsoft推奨の電⼦サインソリューション」と訴求するなど、大きな強みとしている。
競争相手はAdobeだけではない。signNowやPandaDoc、Zoho Sign、HelloSign、GetAccept、emSigner、OneSpan Sign、Nitro Signなど。大小いくつもの企業が、電子契約ツールをサービスとして提供する。
ただ「オンラインで契約を結ぶ」だけなら、必ずしもDocuSignを使わなくていい。こういう環境になった今、収益性を高めることが容易でないことは明らかだ。