NTTドコモがビジネスプログラム「39works」を通じた新規事業の創出に注力している。同プログラムは、社外のパートナーとプロジェクト体制を組み一体となって企画から開発、運用、保守までを一貫して実施するのが特徴だ。
2017年のスタートからこれまでに約1280件のビジネスアイデアを生み出し、120件以上が検証段階にまで進み、40件以上を事業プロジェクト化している。
ドコモのコアビジネスとは重ならない領域での新たな収益源の創出を目的とし、これまでにプログラミング教育サービスの「e-Craft(イークラフト)」とMRデバイスを使って熟練工のスキル伝承を支援する「複合現実製作所」の2社が子会社としてスピンアウトした。
39worksを管轄するイノベーション統括部の責任者である稲川尚之氏は、CVCのNTTドコモ・ベンチャーズで社長を務めた経歴を持つ。7月にプロジェクトをリブランディングし、注力領域の絞りこみなど創出ペースの加速を目指し様々な施策を打ち出している。
今回の記事では稲川氏に聞いた、39worksの足元の状況と今後の方針について紹介していく。
稲川尚之氏
【略歴】いながわ・たかゆき NTTドコモ入社後、インフラ設計や資材調達、国際ビジネスなどを担当。MBA取得のための海外留学を経験し、2013年にドコモイノベーションズの社長に就任。シリコンバレーでベンチャー企業との連携・出資のチームを率いる。2018年、NTTドコモ・ベンチャーズの社長に就任。ベンチャー投資・協業の実績を積む。2021年6月より現職。
ーー39worksの役割とは。
スタートアップのようなスピード感で新規事業を生み出すことがメインの役割だ。プロセスのイノベーションや、本業ではない分野における新しい収益源の創出などに取り組んでいる。
ドコモグループには、約4万6000人程度の従業員がいる。コンシューマー向けや法人向けの組織など様々ある中、それぞれの部署に新規事業を考える人がいるが、その人たちだけでなく全社的にアイデアを募集している。
新規事業の開発に関わっていない人でも自分のアイディアを出してチャレンジできる風土を醸成させ、新規事業を次々に生み出せるような仕組みづくりと新しい収益源の創出を目指している。
我々が所属するイノベーション統括部が39worksを管轄しており、現在70名程度のメンバーがいる。最近は中途採用も活発になっていて、我々の取り組みに興味を持ってくれて応募してくれる人も増えてきた。
ーーなぜスピード感を重視するのでしょうか。
通信事業は2020年から始まった高速通信規格「5G」に至るまで、ジェネレーションを重ねて発展してきた。スマートフォンの登場以降の戦いのフィールドは、契約者数を増やすことのみならず、サービスレイヤーにシフトしている。
実際に、アプリ制作会社の台頭によって有力サービスの多くがスタートアップから生まれている。 ドコモの技術的なロードマップでは、2030年頃に次世代高速通信規格の「6G」の実現を目指しているが、ジェネレーションが変わるごとに大きな変化が起こる。