東芝が経営危機にある、ということは連日のニュースの中で嫌というほど聞こえてくるが、実のところ東芝ってパソコンとケータイの会社だと思っていて、原子力とか関係あるんだ?くらいに思っていた。
ということで改めて東芝とはどんな会社なのかについて見てみる。シンプルにどんな事業を展開していたのかをまずは把握したい。
まずは全体の業績を知りたい。直近5年の推移を見てみよう。
これだけを見ると、売上高の大きさはずっと5-6兆円をキープしており、決して悪化しているとは言えない。顕著といえば顕著なのは、営業利益・キャッシュフローが2015年度にマイナスになっていることと、株主資本を大きく減らしていることだろう。前年の3分の1以下にまで株主資本が減少している。
ここから推測できるのは、東芝の業績悪化の要因は事業規模の縮小というよりは収益性の悪化にあるのかも?ということ。なんらかのコストが経営を逼迫したのではないだろうか。
5つの事業セグメント
次は、東芝の事業セグメントを見てみよう。2016年6月の有価証券報告書によれば、東芝の事業は「電力・社会インフラ」「コミュニティ・ソリューション」「電子デバイス」「ライフスタイル」「その他」の5部門から構成される。
①電力・社会インフラ(従業員数:54066人)
原子力・火力・水力などの発電システムの製造販売、サービス提供を行う。これが連日報道されてるやつか。
②コミュニティ・ソリューション(従業員数:50768人)
上下水道システム、環境システム、放送システム、道路システム、通信システム、エレベーター・エスカレーターなど。
③電子デバイス(従業員数:34158人)
光半導体、イメージセンサ、NAND型フラッシュメモリ、記憶装置(HDD、SSD)など
④ライフスタイル(従業員数:20393人)
パソコン、タブレット、テレビ、録画再生機機など。これが俺の知っている東芝だ。
⑤その他(従業員数:24870人)
ITソリューション、物流サービスなど。
こうして見ると、「リーディング・イノベーション」というキャッチフレーズとともに俺が知っている東芝は5つある事業のうちの一つにしか過ぎなかったということがわかる。従業員数で言っても全体の2割以下である。
今度は売上高の内訳を見てみよう。
全体の33%が発電システムなどを製造する「電力・社会インフラ事業」で、「コミュニティ・ソリューション事業」と合わせると社会インフラ系の事業だけで過半数を超えている。我々の知っているパソコンやらケータイを作ってる東芝は全体のわずか8%に過ぎない。これは知らんかった。
次に、セグメントごとの営業損益もあわせて見てみると、まあどれも赤字であるが、渦中にある電力・社会インフラ事業の赤字の大きさが最も大きい。
有価証券報告書には「事業などのリスク」という項目があり、その中に投資家に対してあらかじめ説明しておく必要がある懸念点を記載しておく決まりになっている。何かが起こった場合のための事前釈明という感じか。
「我々の事業領域には、グローバルな激しい競争があるため..」などのおきまりのリスクが並んでいる中に、「財務リスク」として次のような記載があった。