まだ確定したわけではなさそうだが、ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイが、テキサスを拠点として送配電事業を展開するオンコー・エレクトリック・デリバリーを175億ドル(およそ2兆円)あまりで買収する方向だと、各メディアが報じている(WSJ)。
記事の中でも軽く触れられているが、オンコーはエナジー・フューチャー・ホールディングスの保有会社であり、過去最大規模のレバレッジド・バイアウトによって非上場化していた。記事には書いてないが、現在はヴィストラ・エナジーに社名が変わって再上場しているようだ。
(会社ホームページより)
ヴィストラ・エナジーの歴史は1882年にダラス・エレクトリック・ライティング・カンパニーがダラスの街に灯をともしたことから始まった。
1945年には周辺の電気会社を束ねるテキサス・ユーティリティズ社となり、1999年には「TXU」が社名となる。
2001年にテキサスのエネルギー配送事業を「オンコー」としてブランド化するとともに分社化(2004年にまたTXU Electric Deliveryに改名)。
2002年にはTXUヨーロッパが失敗、英国事業が売却され、ヨーロッパから撤退。同年に配当金を80%減額するなど、サバイバル計画を開始したという。この頃から経営がやばかったということだろう。
2004年には初めてCEOを外部から雇うとともに、情報通信事業から撤退して業績改善(ターンアラウンド)計画を発表。オーストラリア事業、燃料事業、ガス事業が売却される。
2007年にはバイアウトファンドのKKRやゴールドマンサックスなどとともに、非上場化の準備を開始。TXU Electric Deliveryは再び「オンコー」としてブランド化。社名を「エナジー・フューチャー・ホールディングス」とした上で非上場化を完了した。
そして2014年にチャプター11による破産を申請。この時、「オンコー」だけは例外とされ、チャプター11の適用には含まなかった。
2016年にはTXUエナジーなどの親会社としてTCEHコーポレーションが設立され、既存のエナジー・フューチャー・ホールディングスからは独立したスピンアウト企業としてOTCQX市場に上場。その後すぐにヴィストラ・エナジーに社名が変更された。
そしてその後、上の画像にあるように今年の5月にニューヨーク証券取引所に上場を果たした、ということのようだ。
要するにこのニュースをまとめるとこういうことだと思う。
・テキサスの歴史ある電気企業TXUは長い間経営難に苦しみ、2014年に破綻
・破綻申請の中から、配電事業のオンコーは除外された
・TXUはKKRらによるLBOによって非上場化してエナジーフューチャーHDに
・2016年にヴィストラ・エナジーを新しい親会社として設立し、今年になってニューヨーク証券取引所に上場
おそらく、グループ内でオンコー・エレクトリック・デリバリーだけが健全な経営をしていたために破産せず、今回バークシャーに買われそう、ということなのだろう。
再スタートしたヴィストラ・エナジーがうまく事業を進められるかはまだわからないが、主要子会社であるTXUエナジーとLuminantが変わらないなら難しいんじゃないか、という気もする。
最後に、オンコーが非上場のはずなのにSECファイリングを提出していたので、業績推移をゲットすることができた。かなり業績の安定した会社であることがわかる。