中国でニュースアプリを提供する「QuToutiao」(ティッカーシンボル: QTT)の2018年3Q決算が発表されました。
"Toutiao"といえば『Tik Tok』などを運営する「ByteDance」社が思い浮かびますが、『QuToutio』はニュースアプリ二番手として数多くのユーザーを獲得しています。
2018年9月にNASDAQ上場を果たし、今回はIPO後初の決算発表となりました。
QuToutiaoは猛烈なスピードで業績を拡大しており、売上は前年から6.2倍となる9.8億元(161億円)に爆増。
前四半期と比較しても2倍以上となっています。
営業損失は10.4億元(171億円)に拡大し、売上高を上回る数字となっています。
QuToutiaoの収益を支えているのはアプリ内に掲載する広告収益です。
今四半期の売上は9.0億元(148億円)で、前年から472%増加しています。
これまでは広告配信を行なうBaiduが主要な顧客となっており、上場申請資料によると2016年は売上の約70%、2017年は約44%がBaiduによるものでした。
QuToutiaoは2018年2月にプログラマティック広告システムを運営する広告代理店を買収。
サードパーティ配信者からの脱却を推し進めており、2018年上半期の売上は78.2%が買収した広告代理店を通じた収益となっています。
買収したシステムを活用してQuToutiaoは広告主向けのマーケティングソリューションも展開しており、「その他」収益が8,085万元(13.3億円)まで拡大しました。
QuToutiaoが猛烈な勢いで広告収益を稼ぎ出せているのは、利用ユーザー数が爆速で増加しているためです。
日次平均アクティブユーザー数(DAU)は2000万人を突破し、2,130万人に達しています。
対前年の増加率は233%で、前四半期よりも増加のペースが加速しています。
なお、「ByteDance」が運営する『Jinri Toutiao』のDAUは2017年末時点で1.2億人と言われているので、『QuTouitao』は10分の1程度の規模ということになります。
ユーザーの増加スピードに加えて驚異的なのが、DAU1人あたりの平均利用時間です。
1日の平均利用時間がグイグイと上昇しており、今四半期は55.9分に。
2年間で利用時間が倍以上に伸びています。
QuToutiaoは「ロイヤリティプログラム」を強化することでユーザーエンゲージメントの向上を図っています。
ログイン報酬やニュース閲覧時間に応じてポイントが付与され、QuToutiaoが展開するオンラインショップで利用したり、さらにはキャッシュに換金することもできます。
初回ログインで18元(295円)プレゼントという何とも太っ腹なロイヤリティで、使えば使うほどポイントを稼げる仕組みが利用時間急増の秘訣となっているようです。
ユーザー数の急増に加えて利用時間も大幅に伸びているため、1人あたりの平均売上高(ARPU)は右肩上がりに上昇しています。
今四半期のARPUは前年の約2倍となる45.9元(756円)で、顧客単価の上昇がQuToutiaoの成長をさらに加速させていることがわかります。
QuToutiaoの営業コストはロイヤリティプログラムを含めた販促費が多くを占めます。
今四半期の販促費率は売上高に対して106.9%で、金額にして約170億円。
売上高を上回るマーケティングコストを投じています。
加えて今四半期は9月のIPOに伴う費用が増加したため、一般管理費が75.9%に上昇しました。
QuToutiaoのバランスシートも確認してみましょう。
総資産27.8億元(456億円)に対して現金・金融資産の合計が24.8億元(407億円)と資産全体の約9割を占めています。
資産の調達原資はほとんどが株式で、払込資本は36.5億元(598億円)にのぼります。
有利子負債による調達は行なっておらず、累積損失が17.5億元(287億円)に増加しました。
前年までプラスで推移していた営業キャッシュフローは9か月時点で7,530万元(12.3億円)のマイナスとなっています。
2018年9月の上場から株価は軟調に推移しており、現在の時価総額は15.2億ドルです。
キャッシュ24.8億元(3.6億ドル)を考慮した企業価値(EV)は11.6億ドル。
現在の成長率を維持すると仮定して年間売上高を30億元(4.3億ドル)と見積もった場合2.7倍の評価を受けている計算となります。
「ロイヤリティプログラム」という成長ブースターによる爆速成長をどこまでキープできるのか、今後の動向に注目していきたいと思います。