今回は、iFaceなどモバイルアクセサリーを扱う「Hamee」についてまとめていきます。
創業者の樋口淳士氏は1977年生まれ。
神奈川県小田原市の出身で、慶応大経済学部に進学してします。
会社経営をしていた家族や親戚の影響で、幼い頃から自分も起業するのが当たり前と感じていたそうです。
1997年、大学3年生になった時には周りが就職活動を始めたタイミングで「それじゃ僕は起業しよう」と思って自ら事業をスタート。
「世界一のインターネットスーパーを作ろう」と考えて買い物の代行を開始しますが、注文が来ないために1ヵ月で断念。
そんな時、天然石のアクセサリーを1000円〜2000円ほどの価格で露店販売している人を見かけます。
「天然石」というと価格が高いイメージもありますが、実際には安く、なおかつ東洋の神秘的な印象もあって 欧米にもネットを使って販売できると思ったそうです。
そこで、天然石のアクセサリーをネット通販する事業を開始します。
もっと面白い商品を作れないかと、樋口氏は天然石のストラップを持って渋谷の街でリサーチしました。
その際に、「ハイビスカスの花をつけるといい」と言われ、ハイビスカスストラップを販売すると大ヒット。
1998年、樋口氏が大学4年生になると、メーカーマクロウィル有限会社を設立します。
携帯ストラップの販売を本格化し、スマートフォンの時代になるとスマホケース「iFace」を販売して大ヒット。
2015年にマザーズ市場に上場し、2016年に東証一部に市場変更しています。
さっそく業績を見ていきましょう。
2018年4月期の売上は93.7億円。5年前の41.6億円と比べると2倍以上に拡大しています。
経常利益率も5.1%から13.5%へと上昇し、経常利益は12億円を稼ぎ出しています。
今回のエントリでは「Hamee」の事業内容と財政状態、事業展望についてまとめていきます。
Hameeのメイン事業は、モバイルアクセサリーなどを販売する「コマース事業」です。
そのほかに「プラットフォーム事業」なども展開していますが、まずはコマース事業の内容をチェックしてみましょう。
Hameeのコマース事業では、スマホケースやイヤホン、スマートスピーカーなど様々なモバイルアクセサリーを取り扱っています。
(iFace)
iFaceシリーズはディズ二ーやムーミンのデザインを取り揃えており、2018年9月時点で累計販売数1,200万個を突破しました。
楽天、YahooなどのECや自社ECの「Hamee」、大手量販店など様々なチャネルで取り扱っています。
(決算説明資料)
楽天市場では、4万店以上の店舗の中から選出される 「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー2017」のスマートフォン・ タブレット・周辺機器 ジャンル大賞を受賞。
3年連続7回目だそうです。
「iFace」以外にも、充電タップや手帳型スマホケース、Bluetoothスピーカーなど自社企画製品を幅広く取り扱っています。
Hamee全体における売上93.7億円のうち、コマース事業の売上は81.2億円。
全体の87%ほどを占めており、過去5年間の成長を牽引してきたことが分かります。
コマース事業がHameeの売上のほとんどを占めていますが、プラットフォーム事業もこの5年で大きく成長しています。
Hameeのプラットフォーム事業では、EC事業者のネットショップ運営業務を自動化する「ネクストエンジン」を提供しています。
(ネクストエンジン)
ネットショップの運営では、自社のウェブサイトだけでなく楽天やYahoo!ショッピング、Amazonをはじめとして数多くの「店舗」を管理しなくてはなりません。
ネクストエンジンは上のように数多くのショッピングモールに対応しており、出店している複数の「店舗」を一元管理することができます。
ネットショップの運営者は、注文が入ると「在庫確認」「受注処理」「出荷指示」とオペレーションを回します。
また、オペレーションのステップが進むたびに、注文者に対してメールを送る必要もあります。
ネクストエンジンは、このようなネットショップ運営の際に生じるルーチンワークを可能な限り自動化してくれます。
複数店舗を一元管理した上で、運営オペレーションの多くを自動化できるというわけです。
(ネクストエンジン)
料金体系は、月額1万円の基本料金を土台として、400件を超えると受注件数ごとに単価が課金されるというシステムです。
たとえば、1ヶ月の受注件数が1000件のEC事業者が利用した場合、1ヶ月の利用料金は3.5万円となります。
(決算説明資料)
2010年にリリースされて以来、ネクストエンジンの契約社数は右肩上がりで2018/4月期は3095社です。
(決算説明資料)
契約社数の増加に伴い、受注処理件数と受注処理金額も右肩上がりに伸びています。
その他事業
「コマース事業」「プラットフォーム事業」の二つがHameeのメイン事業ですが、その他事業として次のようなものもあります。
(ニュースリリース)
2017年6月に開始した地方自治体向け「ネクストエンジン」サービスです。
ふるさと納税事業を行う地方自治体に向けて提供しています。
総務省の「ふるさと納税に関する現況調査結果」によれば、全国の自治体数は1700以上。
2015年度の寄附額は1,652.9億円で前年度の4.3倍に増えており、件数は726万件と前年度の3.8倍に増加しています。
ふるさと納税の市場規模は拡大しており、規模が大きくなると業務課題が複雑になる点がEC事業者と似ていたためサービス提供が始まりました。
その他事業の売上は1800万円ほど。
続いて、Hameeのコスト構造と財政状態を見ていきます。
まずはコスト構造から見ていきましょう。
2018/4月期の売上原価率は49.3%、3年で10ptほど減少しています。
2018/4月期の販管費率は36.1%です。
売上原価率が改善している背景として、「自社企画製品」の売上比率が向上していることが要因に挙げられます。
2013年4月期、コマース事業における自社企画製品の売上比率は37%にすぎませんでした。
その後、「iFace」をはじめとするヒット商品の拡大によって2016年4月期には61%にまで拡大。
2017年以降は具体的なデータを公表していませんが、その後も自社企画製品の比率が増えたことで利益率が改善したとのこと。
販管費の内訳を見ていきましょう。
販管費の中では給与手当が最も多く、売上に対して7.88%あります。
バランスシートも見ていきます。
総資産は50.4億円あります。
そのうち、現預金は16.9億円、売掛金は12.6億円あります。
資産の原資となる負債純資産の部を見ると、利益剰余金が24.7億円と最も大きく、バランスシートの49%を占めています。
借入金は2.9億円ほどあります。
キャッシュフロー推移も見ていきましょう。
2015年に上場してから順調に営業キャッシュフローが大きくなり、2018/4月期は12.4億円あります。
フリーキャッシュフロー推移も見ていきましょう。
フリーキャッシュフローも右肩上がり増えています。
企業価値(EV)を計算していきます。
2018年10月5日時点の時価総額は240.6億円です。
現預金16.9億円と借入金2.9億円を加味すると、企業価値(EV)は226.6億円となります。
FCFが8.1億円ありますから、市場からの評価は27.9年分となります。
最後にHameeの事業展望を見ていきましょう。
これから3〜5年の間、コマース事業をベースとして、3事業すべてで成長を狙っています。
まずはコマース事業。
Hameeが主力としているのは「自社企画商品」ですから、今後もユニークな商品によるブランド力の向上を図っていきます。
ITによる自動化の推進による経営効率化、ブランドの複数展開によって長期的な成長を加速させていこうとしています。
ポイントは「ブランド力」ということになります。
プラットフォーム事業では、さまざまな機能追加による付加価値向上を目指しています。
一つ目は、「商品レコメンドAI(人工知能)」による売上拡大ツールの導入です。
購入者向けに配信されるメールに、パーソナライズされた商品のレコメンドを自動で掲載し、売上の拡大とリピーター確保などにつなげていくとのこと。
販売面では、「大塚商会」とパートナーシップを強化。
「ネクストエンジン」の5,000社での導入を目指し、「たよれーる」への掲載や期間業務システム「SMILE BS2 販売」との連携を行います。
Hameeが「ネクストエンジン」で掲げているのは、ネット通販業界における「データ・プラットフォーム」というビジョンです。
5,000社を目標としているものの、データ・プラットフォームと言うには少ない気もします。
三つ目の戦略としているのが「グローバル展開」です。
韓国やアメリカで自社のネットショップを展開しているほか、中国のタオバオ(アリババ)や台湾のヤフーにも店舗を出店。
インドを含めた5カ国でモバイルアクセサリーを販売しています。
アメリカではECによる小売よりも、大手量販店への卸売の方が大きくなっています。
ハローキティなどキャラクター関連が人気とのこと。
中国越境ECの売上と市場規模予測も見てみます。
2018年4月期の実績では、「HameeShanghai」だけでなく中国越境ECが大きく拡大しています。
2015年における日本と中国間の越境ECの市場規模は8,000億円ほどでしたが、2019年には2.3兆円に拡大することが予想されています。
Hameeの事業戦略をまとめると、次のようになります。
自社ブランド製品を中心に拡大してきた「Hamee」が、これからどこまで事業を伸ばせるか、今後も注目していきたいと思います。
参考資料