世界2位の通信会社ベライゾンの事業KPI推移と、世界トップ3キャリアの比較

前回の記事(世界最大の通信キャリアAT&Tの事業数値を分解して追ってみた)に続いて、今日は世界第2位の通信会社であるベライゾン・コミュニケーションズについて調べます。

ベライゾンの歴史

ベライゾンの歴史は1876年のアレクサンダー・グラハム・ベルによる電話の発明にまでさかのぼります。

翌年にはベル電話会社が誕生し、1885年に長距離電話会社としてAT&Tが誕生。

その後20世紀の後半まで、AT&Tの傘下に形成された「ベル・システム」は米国の通信事業を独占して拡大を続けます。

1984年に司法省からベル・システムの分割を命じられ、7つの地方電話会社が生まれます。

そのうちの一社であるベル・アトランティックが、2000年にGTEコーポレーションと合併して生まれたのがベライゾン・コミュニケーションズという会社です。

ベライゾンの業績

まずは全体の業績を見てみます。

2002年から右肩上がりに成長し、売上高は1259億ドル、営業利益は270億ドルという水準に達しています。

ベライゾンの事業セグメント

ベライゾンの事業セグメントは(AT&Tと違って)とてもわかりやすく、基本的には「ワイヤレス」「ワイヤライン」の二つです。無線と有線ですね。

有線(Wireline)の収益は2006年に495億ドルを記録してから少しずつ減少していき、2016年には313億ドルにまで減っています。

ワイヤレスの方は2007年まで有線よりも少なかったのが、ほとんど右肩上がりに成長を続け、2016年は891億ドルの収益を生んでいます。

有線事業

ベライゾンの有線事業のKPI推移をみてみましょう。

まずなんと言っても目立つのは電話回線(Total voice connections)の減少です。

2016年にはカリフォルニア、フロリダ、テキサスにおける有線事業の一部をフロンティア・コミュニケーションズに売却したようで、さらにガクンと数値が下がっていますね。

ワイヤレス事業

続いて、完全にコア事業となったワイヤレス事業のKPIをみてみます。まずは契約数。

この10年間で「Retail connections」が6373万から1億1424万にまで大きく成長しています。

ワイヤレス事業に関しては月間解約率(Churn Rate)もみることができます。

全体的に1.2%前後で安定して推移。

次に、アカウントあたりの月間収益(ARPA)です。

2016年はアカウントあたりで144ドルと、かなり高い水準ですね。

しかし、先ほどの接続数(Connections)とはどうやら違うようで、一つのアカウントが複数の接続数をもつようです。

だんだん増えてきています。家族で一アカウントみたいな感じでしょうか。

そのアカウント数の推移です。

めちゃ横ばいです。どうやらアカウント数はほとんど変わっていないがアカウントあたりの接続数が増加しているようです。

AT&T、チャイナモバイルとの比較

せっかくなので、前回調べたAT&T及びチャイナモバイルの値と比べてみます。

まずは接続数の比較。

2016年ではAT&Tが1.3億でベライゾンが1.1億と、ベライゾンよりもAT&Tの方がわずかに大きいようです。

しかし、チャイナモバイルの契約数は8.5億ということで、利用者数としてはほぼ桁違いになっています。

まあこれは、AT&TとVerizonがアメリカ国内で競争しているのに対し、チャイナモバイルはほぼ独占なのでしょうがないですね。

続いてARPU。ベライゾンのARPUは「ARPA / アカウントあたりの接続数」で計算しました。

ARPUもAT&Tが59ドル、ベライゾンが47ドルということで、ベライゾンよりもAT&Tの方が高いようです。

日本ともそれほど変わらない水準。むしろちょっとやすいでしょうか。そこらへんは次回調べてみます。

チャイナモバイルは8.6ドルと、かなり低い水準。うらやましい限りです。


最後に解約率(Churn Rate)です。

AT&Tとベライゾンは1.5%未満という低い水準ですが、チャイナモバイルは2%を超えています。


ベライゾンがメインのエントリでしたが、チャイナモバイルの圧倒的な規模とポテンシャルを見せつけられたような気がします。

次回は日本国内やヨーロッパなど、他のキャリアとも比較してみたいですね。


まとめたデータなど

ベライゾン

世界の通信キャリア