今回ご紹介するのは、今月「SPAC」で上場したばかりの米ベンチャー、オープンドア(OpenDoor Labs)である。
オープンドアは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの代表的な投資先の一つで、住宅を売買するためのプラットフォーム事業を手がける。
2020年はSPAC(特別目的買収会社)が大盛り上がりになっているが、いわゆる王道的な注目ベンチャーで上場した例は多くない。
Airbnbはビル・アックマンの提案を断って普通に上場した。市場からの評価が高い注目ベンチャーにとって、何か特別な理由がない限り、わざわざSPACで上場する必要はない。
オープンドアは、間違いなく注目ベンチャーの一つ。アメリカの不動産市場がデカイのは言うまでもなく、日本もそうであるように依然としてオフラインが強い。
アップサイドの大きな伝統的産業で、トップを走っている企業の一つがオープンドアである。果たしてどういう会社なのか、開示された資料などを元に整理していこう。
創業者の一人であるキース・ラボイス(Keith Rabois)はシリコンバレーの有力者だ。
過去にはSquareやPayPalの幹部、コースラ・ベンチャーズのマネージング・ディレクターを務めた。現在もファウンダーズ・ファンドのゼネラルパートナーに名を連ねる。
ラボイスは2003年の時点で、すでに大きなアイデアを持っていた。それは、住宅を売りたい人に買取価格を「即座に」オファーするウェブサイトである。売り手が承諾すると、ごく短期間で売買が成立、自宅を現金化することができる。
多くの人にとって、住宅は最も高価な買い物である。一方で、現金化するのは非常に大変だ。焦れば、安値で売らざるを得ない。テクノロジーの力で価格を合理化すれば、誰にとってもフェアでスムーズな取引が実現できる。
データに基づいた価格なら、プラットフォーム自身が買収してしまえばいい。あとはタイミングをみて、収益の出せる価格で売却すればいいだけである。
残念ながら、当時はドットコム・バブルが崩壊したばかり。野心的なアイデアに投資できる投資家は多くなく、ラボイスはアイデアを眠らせることとなった。
オープンドアの創業は2014年と、かなり最近である。一緒に立ち上げたのは、連続起業家のエリック・ウー(Eric Wu)。