【考察】バークシャーが日本の五大商社に一律投資:どんな狙いがあるのか?
バークシャー・ハサウェイ

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは8月31日、驚きのプレスリリースを開示した。この1年、日本の五大商社の株式を購入してきたというのだ。

Berkshire Hathaway acquires 5% passive stakes in each of five leading Japanese trading companies

株式の購入はバークシャーの子会社であるナショナル・インデムニティを通じて行われた。

ナショナル・インデムニティは1967年に買収し、バークシャーにとって保険分野進出の契機となった企業だ。今では純資産ベースで世界最大の損害保険会社に成長した。

今回の投資対象となったのは、伊藤忠、丸紅、三菱、三井、住友の5大商社。東京証券取引所を通じ、これまで12か月をかけて取得してきたという。

2020年までの資本市場では世界的な株高が続き、3月のコロナショック後も大きな市場崩壊には至らなかった。実体経済が打撃を受ける中で株価ばかりが上がり続ける中、バフェットが次に選ぶ銘柄が何なのかは注目されてきた。

今回は、8月30日に90歳を迎えたバフェットが何故、日本の五大商社に出資するに至ったのかについて考察してみたい。

五大商社への投資持分は約7,000億円か

プレスリリースの中で、バフェットは株式取得の理由について極めて簡潔に言及している。

「バークシャーが日本の未来、そして投資対象に選んだ5社に参画することができて嬉しい。5大商社は世界中に多くのジョイントベンチャーをもち、今後もこうしたパートナーシップを拡大するだろう。将来にわたり、相互利益の機会があることを期待する」

“I am delighted to have Berkshire Hathaway participate in the future of Japan and the five companies we have chosen for investment. The five major trading companies have many joint ventures throughout the world and are likely to have more of these partnerships. I hope that in the future there may be opportunities of mutual benefit.”

まず確認したいのは、今回発表された投資持分の総額だ。

現時点で伊藤忠商事は4.32兆円、丸紅は1.11兆円、三菱商事は3.72兆円、三井物産は3.23兆円、住友商事は1.70兆円の時価総額だ。合計14兆円の時価総額で、5%だとすると約7,000億円の持分ということになる。

バークシャーは今後の株価次第では持分を最大9.9%まで拡大する。アップルへの投資持分だけで今や915億ドル(≒9.6兆円)に達したが、それでも1兆円規模の投資は大きい。

具体的な意思決定を誰が行ったかは分からないが、規模の大きさ、コメントの様子からバフェット自身も関わった本気の投資でありそうだ。もっとも、後述するように今回の投資は「バフェットらしくない」部分もある。

バークシャー・ハサウェイはこの五大商社についてもロングタームで保有する方針を明確にした。10%以上の出資については「株主総会での承認がない限り行わない」というバフェット自身の誓約もある。むしろ本当はもっと買いたいと言わんばかりだ。

コンシューマ産業が大きい三菱商事

バフェットが五大商社を投資対象として選んだ一番の理由は「日本」ではない。対象となったのはグローバルに持っている事業ポートフォリオだ。

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