不調と言われて久しい米ヤフーの経営状態を見てみる。まずは近年の売上高、営業利益、純利益の推移をグラフにしてみた。(2015年度Form 10-Kより)
なんだか不思議なグラフだ。2012年と2014年には純利益が営業利益よりも大きくなっているし、2015年には突然の大赤字。
そもそも、Yahoo!って売上高50億ドルにも到達していないんだな。これはFacebookやNetflix(ともに約70億ドル)よりも低い水準だ。Yahoo! JAPAN(6500億円)よりも小さい。100億ドルには達してるだろうと勝手に思ってたのでこれは意外。
まずは2015年度、突然の大赤字の理由について掘り下げてみる。
Form 10-Kの「Total operating expenses」という項目をみると、2014年に44.7億ドルだった営業費用が2015年には97億ドルに倍増している。
コストの内訳もグラフにしてみよう。
なるほど、わかりやすい。「のれん減損費用(Goodwill impairment charge)」が売上高の90%にも達している。そりゃあ赤字にもなるわ。こいつのせいだ。
しかし、「のれん減損」ってよく聞く言葉だけど、よく意味をわかっていなかったので調べてみた。
企業を買収した際の「純資産額」を「買収価格」が上回るとき、その差額を「のれん」という。買収した以上は「のれん」が将来的に利益として回収されることが見込まれるわけだが、それが期待通りにいかなかったとき、「減損」として計上する。これがのれんの減損。
つまりこの場合は、Yahoo!が過去数年にわたって行ってきたM&Aが、期待通りに収益化できなかったため、損失として計上したということか。この中にはTumblrも2.3億ドルの減損として含まれている(Tumblrは2003年に11億ドルで買収)。
ものすごくざっくりと言ってしまえば、経営の多角化をするために企業買収をたくさん行ってきたが、うまく収益化できなかったということか。その結果が出たのが2015年度。
もう一つ気になる点がある。2012年と2014年になぜか純利益が営業利益よりも大きくなっている点だ。
2012年度の報告書を見てみると、「アリババ株を5.23億株手放したことによる税引後28億ドルの利益」、2014年度には「アリババのIPO時のADS(米国預託証券)の売却による税引後63億ドルの利益」とある。なるほど、両方アリババか。
これに関して少しグーグル検索してみると、『米ヤフー崩壊の舞台裏、11年前の「アリババ株取得」が命取りに』という記事を見つけた。
保有するアリババ株の価値が米ヤフー自体の中核事業の価値を大きく上回ってしまい、アリババ株を売却する際の巨額の税金を払えなくなってしまったのだという。そして、2016年7月にベライゾンへの売却が決定した。
そんなこともあるのか...
企業経営って難しいんだな。当人たちは大変だろうが、極めて興味深い事例だと思う。